税制全般

遺族年金を受給する親族は扶養控除の対象になる?非課税所得と扶養判定の完全ガイド

遺族厚生年金や遺族基礎年金を受給している親族を扶養控除の対象にできるかを詳しく解説。非課税所得の扱い、具体的な判定方法、2025年改正による影響まで、国税庁の公式見解をもとに実例を交えて説明します。

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遺族年金を受給する親族は扶養控除の対象になる?非課税所得と扶養判定の完全ガイド

「遺族年金をもらっている母を扶養に入れることはできるの?」「年間120万円の遺族厚生年金があるけど、扶養控除は受けられる?」

このような疑問をお持ちではありませんか。遺族年金は非課税所得として特別な扱いを受けるため、一般的な給与収入とは扶養判定の方法が異なります。

この記事では、国税庁の公式見解をもとに、遺族年金を受給している親族の扶養控除について、具体的な判定方法から2025年改正による影響まで、実用的な観点から徹底解説します。

結論:遺族年金は扶養判定に影響しません

まず重要なポイントを先にお伝えします。

遺族厚生年金や遺族基礎年金は非課税所得のため、扶養親族の合計所得金額の計算に含まれません。

そのため、遺族年金のみを受給している親族は、他に所得がなければ扶養控除の対象となります。

国税庁の公式見解

国税庁は以下のように明確に示しています:

扶養親族や控除対象配偶者に該当するか否かを判定する場合の合計所得金額には、所得税法やその他の法令の規定によって非課税とされる所得の金額は含まれない

(出典:国税庁タックスアンサー No.1180

非課税所得の代表例

遺族年金以外にも、扶養判定において考慮されない非課税所得があります。

年金関係の非課税所得

遺族給付

  • 遺族厚生年金
  • 遺族基礎年金
  • 遺族共済年金

障害給付

  • 障害厚生年金
  • 障害基礎年金
  • 障害共済年金

その他の主要な非課税所得

社会保障給付

  • 雇用保険の失業等給付
  • 児童手当・児童扶養手当
  • 生活保護による給付

損害賠償等

  • 交通事故の損害賠償金(精神的被害に対するもの)
  • 医療費の実費補償

その他

  • 宝くじの当選金
  • NISA口座での運用益

具体的な扶養判定の方法

パターン1:遺族年金のみのケース

家族構成:母(65歳)が遺族厚生年金年額120万円を受給

扶養判定

  • 遺族厚生年金120万円:非課税所得のため合計所得金額に含めない
  • 他の所得:なし
  • 合計所得金額:0円

結論

  • 2025年11月まで:48万円以下 → 扶養対象
  • 2025年12月以降:58万円以下 → 扶養対象

パターン2:遺族年金+パート収入のケース

家族構成:義母(68歳)が遺族厚生年金90万円+パート収入60万円

扶養判定

  • 遺族厚生年金90万円:非課税所得のため除外
  • パート収入60万円:60万円 - 給与所得控除55万円 = 給与所得5万円
  • 合計所得金額:5万円

結論

  • 2025年11月まで:5万円 ≤ 48万円 → 扶養対象
  • 2025年12月以降:5万円 ≤ 58万円 → 扶養対象

パターン3:老齢年金+遺族年金のケース

家族構成:母(72歳)が老齢基礎年金80万円+遺族厚生年金40万円

扶養判定

  • 老齢基礎年金80万円:課税所得(公的年金等控除110万円を適用)
    • 公的年金等所得:80万円 - 110万円 = 0円(マイナスは0円)
  • 遺族厚生年金40万円:非課税所得のため除外
  • 合計所得金額:0円

結論

  • 2025年11月まで:0円 ≤ 48万円 → 扶養対象
  • 2025年12月以降:0円 ≤ 58万円 → 扶養対象

2025年改正による影響

改正内容の確認

扶養親族の所得要件変更

  • 改正前(2025年11月30日まで):合計所得金額48万円以下
  • 改正後(2025年12月1日以降):合計所得金額58万円以下

遺族年金受給者への影響

遺族年金は非課税所得のため、改正の直接的な影響は限定的ですが、以下のようなケースで恩恵があります:

影響を受けるケース

  • 遺族年金+パート収入(48万円超58万円以下の所得)
  • 遺族年金+老齢年金(少額の場合)
  • 遺族年金+その他の収入

改正による新たな扶養対象例

ケース:母が遺族厚生年金80万円+パート収入75万円

扶養判定

  • 遺族厚生年金80万円:非課税所得
  • パート収入75万円:75万円 - 55万円 = 給与所得20万円
  • 合計所得金額:20万円

改正前後の比較

  • 改正前:20万円 ≤ 48万円 → 扶養対象
  • 改正後:20万円 ≤ 58万円 → 扶養対象(変更なし)

より所得の多いケース:母が遺族厚生年金60万円+パート収入110万円

扶養判定

  • 遺族厚生年金60万円:非課税所得
  • パート収入110万円:110万円 - 55万円 = 給与所得55万円
  • 合計所得金額:55万円

改正前後の比較

  • 改正前:55万円 > 48万円 → 扶養対象外
  • 改正後:55万円 ≤ 58万円 → 扶養対象

扶養控除による節税効果

年収別節税効果(一般扶養親族38万円の場合)

年収400万円(所得税率5%)の場合

  • 所得税:38万円 × 5% = 19,000円
  • 住民税:38万円 × 10% = 38,000円
  • 年間合計:57,000円の節税

年収600万円(所得税率10%)の場合

  • 所得税:38万円 × 10% = 38,000円
  • 住民税:38万円 × 10% = 38,000円
  • 年間合計:76,000円の節税

年収800万円(所得税率20%)の場合

  • 所得税:38万円 × 20% = 76,000円
  • 住民税:38万円 × 10% = 38,000円
  • 年間合計:114,000円の節税

老人扶養親族の場合(58万円控除)

年収600万円の場合

  • 所得税:58万円 × 10% = 58,000円
  • 住民税:58万円 × 10% = 58,000円
  • 年間合計:116,000円の節税

よくある質問と回答

Q1. 遺族年金の受給額が多い場合でも扶養に入れる?

A1: はい。遺族年金は金額に関係なく非課税所得です。年額200万円の遺族厚生年金を受給していても、他に所得がなければ扶養控除の対象となります。

Q2. 老齢年金と遺族年金を両方受給している場合は?

A2: 老齢年金は課税所得、遺族年金は非課税所得として別々に判定します。老齢年金については公的年金等控除を適用した後の所得金額で判定し、遺族年金は合計所得金額に含めません。

Q3. 遺族年金の受給権を放棄した場合は?

A3: 受給権を放棄し実際に受給していない場合は、その分は所得に含まれません。ただし、放棄により他の家族が代わりに受給する場合は、その家族の扶養判定に影響する可能性があります。

Q4. 年の途中で遺族年金の受給が始まった場合は?

A4: 扶養控除の判定は年間所得で行います。年の途中から受給が始まった場合でも、その年分の遺族年金は全額非課税所得として扱われ、合計所得金額には含まれません。

Q5. 遺族年金以外の非課税所得との組み合わせは?

A5: 複数の非課税所得がある場合でも、すべて合計所得金額から除外されます。例えば、遺族年金+障害年金+児童扶養手当をすべて受給していても、これらは扶養判定に影響しません。

実践的な扶養戦略

遺族年金受給者を扶養に入れる際のチェックポイント

1. 所得の内訳確認

  • 遺族年金(非課税)の金額
  • その他の収入(課税所得)の有無と金額
  • 公的年金等控除の適用可能性

2. 扶養要件の確認

  • 生計一の要件(仕送りや生活支援の実態)
  • 他の家族による重複扶養の有無
  • 本人の年齢による控除額の違い

3. 最適な扶養者の選択

  • 家族内で最も所得税率の高い人が扶養に入れる
  • 年収の壁を考慮した働き方の調整

2025年改正に向けた準備

改正の恩恵を受けられる可能性がある方

  • 遺族年金+パート収入48万円超58万円以下の親族
  • 少額の老齢年金と遺族年金を受給している親族

事前準備のポイント

  • 現在の所得状況の正確な把握
  • 改正による扶養可能性の検討
  • 必要書類の準備(年金源泉徴収票等)

まとめ

遺族厚生年金や遺族基礎年金は非課税所得のため、扶養控除の判定において合計所得金額に含まれません。そのため、遺族年金のみを受給している親族は、金額に関係なく扶養控除の対象となります。

重要ポイントの再確認

  1. 遺族年金は非課税所得で扶養判定に影響しない
  2. 他の所得との組み合わせで判定を行う
  3. 2025年改正により扶養要件が緩和される
  4. 最適な扶養戦略で年間10万円以上の節税も可能

遺族年金を受給している親族がいる場合は、扶養控除の適用により大きな節税効果を得られる可能性があります。年収の壁計算ツールで具体的な税額計算を行い、あなたの家族にとって最適な扶養戦略を検討することをお勧めします。

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