年末に働き方を見直したい人必見!事業主証明で年収の壁を賢く乗り越える方法
このような質問をよく見かけます。「年末が近づいてきて、残業を頼まれることが多くなったけれど、年収の壁を超えてしまわないか心配で...」「社会保険に加入したくないから、年末はシフトを減らした方がいいの?」
多くの人がこのような悩みをお持ちかと思います。特に年末の繁忙期は、残業代やボーナスで一時的に収入が増えることがあり、年収の壁を意識せざるを得ない状況になりがちです。
しかし、2023年10月から厚生労働省が示した新しいルールにより、「事業主証明」を活用すれば、一時的な収入増があっても扶養範囲内を維持できる可能性があります。さらに、2025年12月1日以降は税制改正により、年収の壁自体が変更されるため、今こそ正しい知識を身につけることが重要です。
この記事では、年末に向けて働き方を見直したい方に向けて、106万円の壁と130万円の壁の正しい理解、事業主証明の活用方法、そして2025年改正後の変更点まで詳しく解説します。
106万円の壁の正しい理解 ~残業代は含まれない重要なポイント~
106万円の壁とは何か
106万円の壁とは、パート・アルバイトが社会保険(健康保険・厚生年金)に加入する必要が生じる年収基準のことです。しかし、この基準には重要な条件があります。
社会保険加入の5つの条件
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が88,000円以上(年収換算で約106万円)
- 2か月を超えて雇用される見込み
- 学生ではない
- 従業員101人以上の企業(2024年10月からは51人以上)
残業代・残業時間は含まれない
ここで重要なのは、残業代と残業時間は計算から除外されるということです。
毎月10万円のパート収入(年収120万円)の例
基本給:月8万円(週20時間勤務) 残業代:月2万円
この場合、月額賃金の判定は基本給の8万円のみで行われるため、88,000円未満となり、社会保険加入の対象外となります。
つまり、年末の繁忙期に残業が増えて一時的に収入が上がっても、基本的な労働時間が20時間未満であれば、106万円の壁を気にする必要はありません。
事業主証明による継続可能性
さらに、一時的な収入増により106万円を超えた場合でも、事業主の証明により最大2回まで被扶養者認定を継続できます。
事業主証明の対象となる事例
- 年末商戦による一時的なシフト増加
- 同僚の病気による代替勤務
- 季節的な業務増加(歳暮・お中元シーズンなど)
- 急な欠員による臨時的な労働時間増加
130万円の壁と事業主証明の活用方法
130万円の壁の判定基準
130万円の壁は、健康保険の被扶養者認定における年間収入の基準です。こちらは残業代も含めた総収入で判定されるため、より注意が必要です。
年間収入の考え方
- 過去の実績ではなく、今後1年間の見込み収入で判定
- 月収108,333円(130万円÷12か月)を継続的に超える場合は対象外
- ボーナスや残業代も含めて計算
事業主証明による継続特例
2023年10月から、130万円の壁についても事業主証明により被扶養者認定を継続できるようになりました。
事業主証明書の記載内容
- 一時的・臨時的な事由の具体的内容
- 事由の発生時期と終了見込み
- 通常の勤務状態への復帰予定
- 事業主としての認識と確認
活用できる具体例
年収120万円のパートタイマーAさんの場合
- 通常:月10万円
- 12月:残業により月14万円
- 1月:通常勤務に戻り月10万円
この場合、12月の一時的な収入増について事業主証明を提出することで、被扶養者認定を継続できます。
2025年12月改正後の変更点
税制面での変更
2025年12月1日以降、以下の大きな変更が実施されます。
扶養親族等の所得要件変更
- 現行:年間所得48万円以下(給与収入103万円以下)
- 改正後:年間所得58万円以下(給与収入113万円以下)
新しい「113万円の壁」の誕生
税制上の扶養控除の基準が103万円から113万円に引き上げられることで、新たな「113万円の壁」が生まれます。
社会保険制度は変更なし
重要なのは、社会保険制度(106万円・130万円の壁)は2025年改正でも変更されないということです。
2025年12月以降の年収の壁
- 106万円の壁:社会保険加入基準(変更なし)
- 113万円の壁:税制上の扶養控除基準(新設)
- 130万円の壁:健康保険被扶養者基準(変更なし)
- 150万円の壁:配偶者特別控除満額基準(変更なし)
社会保険加入の長期メリット分析
年収の壁を意識して働き方を制限することが、本当に世帯にとって最適なのでしょうか。社会保険加入には以下のような長期的メリットがあります。
年金保障の充実
国民年金のみの場合(月額)
- 満額受給:約66,000円
厚生年金込みの場合(年収130万円で20年加入)
- 国民年金:約66,000円
- 厚生年金:約26,000円
- 合計:約92,000円
年収130万円で20年間働いた場合、年金額は月額約26,000円増加し、生涯にわたって大きな保障となります。
医療保障の充実
傷病手当金
- 病気やけがで働けない場合、標準報酬月額の3分の2を最大1年6か月受給可能
- 年収130万円の場合:月額約7万2,000円
出産手当金
- 出産前42日・出産後56日の計98日間、標準報酬月額の3分の2を受給可能
- 年収130万円の場合:総額約70万円
生涯可処分所得の試算
パターン1:年収103万円で20年継続
- 年収:103万円×20年 = 2,060万円
- 年金受給額(65歳以降20年):66,000円×12か月×20年 = 1,584万円
- 生涯総収入:3,644万円
パターン2:年収130万円で20年継続
- 年収:130万円×20年 = 2,600万円
- 社会保険料負担:約19万円×20年 = 380万円
- 手取り:2,220万円
- 年金受給額(65歳以降20年):92,000円×12か月×20年 = 2,208万円
- 生涯総収入:4,428万円
差額:784万円
長期的に見ると、社会保険に加入した方が世帯の生涯可処分所得は大幅に増加します。
具体的計算例とZEIKABEシミュレーション
ケース1:年末残業で一時的に130万円を超える場合
基本情報
- 通常月収:108,000円
- 12月残業代:50,000円
- 年間総収入:158万円
従来の取扱い
- 130万円超過により被扶養者認定取消し
- 国民健康保険・国民年金への加入が必要
事業主証明活用後
- 一時的事由として証明書提出
- 被扶養者認定継続
- 社会保険料負担なし
実際の手取り額や税負担については、[年収の壁計算ツール](https://zeikabe.jp)で詳細に計算することができます。年収158万円と年収130万円の手取り差額や、長期的な影響を瞬時にシミュレーションできます。
ケース2:2025年改正後の113万円前後での働き方
年収110万円の場合(2025年12月以降)
- 税制上の扶養:対象(113万円以下)
- 社会保険:被扶養者継続(130万円以下)
- 最も有利な水準
年収115万円の場合(2025年12月以降)
- 税制上の扶養:対象外(113万円超)
- 社会保険:被扶養者継続(130万円以下)
- 配偶者の所得税・住民税が増加
こちらの詳細な税負担についても、年収の壁計算ツールで正確に計算できます。
年末に向けたアクションプラン
Step1:現在の年収見込みを確認
11月末時点での年収計算
- 1月~11月の給与総額を集計
- 12月の予定給与を加算
- 賞与・手当を含めた年収見込みを算出
Step2:年収の壁との関係を整理
106万円の壁チェックポイント
- 基本的な月額賃金は88,000円未満か
- 週の所定労働時間は20時間未満か
- 残業による一時的増加ではないか
130万円の壁チェックポイント
- 年間収入見込みは130万円以下か
- 12月の一時的収入増は予定されているか
- 来年1月以降は通常勤務に戻るか
Step3:事業主との相談
相談すべき内容
- 年末の業務スケジュール確認
- 事業主証明書作成の可能性
- 来年の働き方についての希望伝達
事業主証明が必要な場合の準備
- 一時的事由の具体的内容を整理
- 通常勤務への復帰時期を明確化
- 必要書類の準備スケジュール確認
Step4:2025年改正への対応準備
税制改正の影響確認
- 113万円の新しい壁の理解
- 配偶者控除への影響計算
- 来年の働き方戦略検討
シミュレーションの実施
年収の壁計算ツールを活用して、以下のパターンを比較検討してください:
- 現在の働き方継続した場合の年収・手取り
- 年末残業を積極的に受け入れた場合の影響
- 2025年改正後の最適な年収水準の検討
Step5:長期的な働き方戦略の検討
社会保険加入のメリット・デメリット比較
- 保険料負担と保障内容のバランス
- 将来の年金受給額への影響
- 医療保障の充実度
家計全体での最適化
- 世帯の生涯可処分所得の最大化
- 税制優遇制度の活用
- ライフプランとの整合性
まとめ
年末に向けて働き方を見直す際は、以下のポイントを押さえることが重要です。
重要ポイントの再確認
- 106万円の壁では残業代・残業時間は除外され、事業主証明により最大2回まで継続可能
- 130万円の壁では総収入で判定されるが、一時的収入増は事業主証明で対応可能
- 2025年12月改正により税制上の扶養基準が113万円に変更されるが、社会保険制度は不変
- 長期的視点では社会保険加入による保障充実が世帯の生涯可処分所得を増加させる
年末調整時期だからこその戦略
年末調整の時期は、1年間の収入を総合的に見直す絶好の機会です。単に年収の壁を避けるだけでなく、社会保険加入による長期的メリットも含めて総合的に判断することが重要です。
特に、事業主証明制度の活用により、従来は諦めざるを得なかった年末の残業や賞与を受け取りながら、扶養範囲内を維持することが可能になりました。
最適な働き方の見つけ方
最適な働き方を見つけるためには、個別の状況に応じた詳細な計算が不可欠です。年収、家族構成、将来設計に応じて、年収の壁計算ツールで具体的な数値を確認し、情報に基づいた意思決定を行うことをお勧めします。
2025年の税制改正を機に、これまでの働き方を見直し、より豊かな生活設計を立てていきましょう。