海外転居前に要チェック!基礎控除の適用方法(11/30以前の国外転出)
このような質問をよく見かけます。「11月末までに海外勤務で出国するが、改正後の基礎控除はどうやって適用する?」「年末調整で改正が反映されない場合、何をすればいい?」出国スケジュールと税務手続が重なると、判断が難しくなりがちです。
国税庁Q&A「7-4」によれば、令和7年11月30日以前に国外転出して非居住者となり、年末調整で基礎控除の見直し等の適用を受けない場合、以下の方法で適用が可能です。本記事では、分岐と手順、注意点、よくあるハマりどころを整理します。
1. 適用を受ける2つの方法(どちらを選ぶ?)
方法① 出国までに準確定申告書を提出
- いったん改正前で提出
- 令和7年12月1日から令和12年12月2日(月)までに「更正の請求」で改正後の基礎控除の見直し等を適用
- メリット:出国前に手続完了、出国後の作業を最小化
- デメリット:後日に更正の請求が必須、書類の二度手間
方法② 12月1日以後に準確定申告書等を提出
- 施行日以後の提出により、申告時に改正後の基礎控除の見直し等を適用
- メリット:一度の申告で完結、改正額を即時反映
- デメリット:出国後の手続となるため、納税管理人の選任や郵送・電子申告の手当が必要
判断基準:出国までの日程余裕、同行家族のサポート体制、納税管理人の手配可否で選択するのが現実的です。
2. 納税管理人の選任(非居住者期間の必須手続)
- 非居住者期間中に更正の請求や準確定申告等の提出を行う場合、納税管理人の選任届出書の提出が必要
- 選任先:国内にいる親族、勤務先、税理士など実務対応が可能な方
- 提出時期:国内に住所・居所を有しなくなる「前まで」に届出するのが安全
よくある落とし穴
- 出国後に選任届出をしようとして手続が滞留
- 宛名地の誤記(番地・ビル名・郵便番号)で返戻
- 納税管理人の範囲(申告・受領・納付)が曖昧 → 事前合意・委任範囲の明確化
3. 重要な注意点(Q&A注記の要約)
- 納税管理人の選任届出を行って国内に住所等を有しないこととなった方は、「年の中途で出国をする場合の確定申告」に係る準確定申告は行えないため、通常の確定申告と同様の方法に
- 確定申告義務がある場合は、国内に住所等を有しなくなる時までに、準確定申告書又は納税管理人の選任届出書の提出が必要
4. ケースに応じた実務フロー(チェックリスト付き)
出国3週間前:時間的余裕が少ない
- 方法①を選択(出国前に準確定申告を提出)
- 出国後、12/1〜令和12/12/2の間に更正の請求
- 納税管理人を選任(更正の請求提出や還付受領のため)
出国2ヶ月前:余裕あり
- 方法②を想定(12/1以後に準確定申告)
- 出国前に納税管理人を選任し、委任状・必要書類を整備
- 12/1以後、改正額で申告・還付手続を進行
医療費控除・寄附金控除がある場合
- 居住者期間の控除は適用可能。レシート・領収書・通院記録と家族名義の立替等のメモを整理
5. 具体例(数値でイメージ)
- 出国日:11/20、年末調整予定:あり、医療費:12万円
- 方法①:11/18に準確定(改正前で提出)→ 12/10に更正の請求(基礎控除を段階適用に修正、医療費控除は据置)
- 方法②:12/15に準確定(改正後で提出)→ 納税管理人が電子申告、還付口座に着金
6. FAQ(よくある質問)
Q1. 出国直前で準確定を間に合わせられない。どうする?
A1. 無理に方法①にこだわらず、方法②(12/1以後申告)+納税管理人選任で対応しましょう。
Q2. 年末調整を済ませれば改正は自動適用?
A2. 出国により年末調整を受けられないケースが多いです。準確定または更正の請求で適用してください。
Q3. 還付金の受取りは海外口座で可能?
A3. 原則、日本国内の金融機関口座が必要です。納税管理人の口座またはご自身の国内口座を手配してください。
まとめ
- 11/30以前の国外転出で年末調整に改正が反映されない場合でも、方法①(出国前に準確定→更正の請求)と方法②(12/1以後に準確定)で改正を適用可能
- 非居住者期間中の手続には納税管理人の選任が必要
- 期限とフォーム、付随控除(医療費等)を含めた総合的なスケジュール設計が肝