税制全般

2025年改正前の準確定申告はどうする?基礎控除と更正の請求

令和7年12月1日施行の基礎控除見直し等に伴い、11月30日以前に提出する準確定申告では改正が適用されない点と、その後に更正の請求で新制度を適用する具体手順・期限・注意点をわかりやすく解説します。

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2025年改正前の準確定申告はどうする?基礎控除と更正の請求

このような質問をよく見かけます。「年の途中で亡くなった家族の準確定申告を11月に提出する予定だが、2025年12月からの基礎控除の見直しはいつ、どう反映されるの?」「海外転居(出国)で準確定申告が必要だが、新しい控除は使えるの?」多くの方がこのような悩みをお持ちかと思います。

令和7年度税制改正(基礎控除の見直し等)は、原則、令和7年12月1日に施行されます。そのため、令和7年11月30日以前に提出する準確定申告では、提出時点では新制度を適用できません。ただし、施行後に「更正の請求」を行うことで、改正後の基礎控除の見直し等を適用できます。この記事では、実務で迷わないための判断軸と具体的な手順、注意点を詳しく解説します。

1. まず押さえるべき制度の前提

改正の施行日と適用関係

  • 改正(基礎控除の見直し等)の施行日は令和7年12月1日。
  • 令和7年11月30日以前に提出する準確定申告には、提出時点では改正は適用されない。
  • 施行後に「更正の請求」を行うことで、令和7年分に改正内容(基礎控除の見直し等)を適用可能。

準確定申告が必要になる典型例

  • 年の中途で死亡した場合の確定申告(相続人等が提出)
  • 年の中途で出国し、納税管理人の届出なく非居住者となる場合の確定申告

いずれも「準確定申告」に該当し、納付・申告期限や書類様式、手続の流れが通常の確定申告と異なる点に注意が必要です。

2. 11月30日以前は適用不可、後日「更正の請求」で適用可能

要点は次のとおりです。

  1. 11月30日以前提出の準確定申告には、提出時点では改正後の基礎控除の見直し等は適用されない。
  2. ただし、令和7年12月1日から令和12年12月2日(月)までの期間に「更正の請求」を行えば、令和7年度税制改正による基礎控除の見直し等の適用を受けられる。
  3. 既に提出した準確定申告の法定申告期限が到来していない場合は、「訂正申告書」の提出でも適用可能。
  4. 令和7年12月1日より前に期限が到来する予定納税の減額申請では、改正の適用はない(改正前規定で申請)。

ポイントは、「提出時点」と「施行日」のズレを、更正の請求(または訂正申告)で埋める設計になっていることです。

3. 実務での進め方(タイムラインとチェックリスト)

タイムライン(例)

  1. 11月中:準確定申告書を期限どおり提出(改正は未適用)
  2. 12月1日以後:改正施行。内容確認・資料整理
  3. 12月以後〜(期限内):更正の請求を提出し、改正後の基礎控除の見直し等を適用

更正の請求期間は、令和7年12月1日から令和12年12月2日(月)まで。余裕はあるものの、相続実務・転居等の関連手続と並行するため、早めの準備がおすすめです。

チェックリスト

  • 対象年分:令和7年分であること
  • 先行提出の有無:11月30日以前に準確定申告を提出済みか
  • どの手段か:更正の請求 or 法定申告期限内の訂正申告
  • 適用内容:基礎控除の見直し等(必要に応じて特定親族特別控除の検討も)

4. 基礎控除の見直し等で何が変わるのか(要点)

改正後の基礎控除は、合計所得金額に応じて段階的に設定されます。令和7・8年分は一部加算がある経過措置があり、従来の一律48万円から実額が変わる点が重要です。また、関連して給与所得控除の最低保障額引上げや、特定親族特別控除の新設、扶養親族等の所得要件の見直しもあります。準確定申告者においても、収入構成・家族状況等により影響が出る可能性があるため、改正後の控除額で再計算し、更正の請求(または訂正申告)で反映します。

5. 更正の請求の実務ポイント

期限

  • 令和7年12月1日〜令和12年12月2日(月)

書類・様式

  • 原則は最新様式を使用。最新様式が整備されるまでの間に提出する場合で、特定親族特別控除を適用する際は、国税庁Q&A「7-2」に準じて記載。

手続の分岐

  • 既に提出した準確定申告に係る法定申告期限がまだ到来していない場合:訂正申告書で対応可
  • 法定申告期限が到来している場合:更正の請求で対応

よくある落とし穴

  • 予定納税の減額申請(12月1日より前に期限到来分)では改正を使えない
  • 家族の所得要件・年齢要件の判定を改正後基準で再確認していない
  • 相続人間の役割分担や必要書類の突合せが不十分で差し戻しになる

6. ケースで理解する(準確定申告の代表例)

ケースA:年の中途で死亡(相続人が準確定申告)

  • 11月中に期限が到来し、準確定申告を一旦提出
  • 12月1日以後に、更正の請求で改正後の基礎控除の見直し等を適用
  • 相続税の手続や遺産分割の状況と併行して、所得控除の適用資料を整理

ケースB:出国により非居住者へ(納税管理人の届出なし)

  • 出国に伴い準確定申告が必要。11月以前提出なら改正未適用で提出
  • 帰国の有無に関わらず、12月1日以後に更正の請求で改正後の控除等を適用

7. 実践:準備する書類と進め方のコツ

準備するもの(例)

  • 収入・所得の内訳資料(給与、公的年金、事業、不動産など)
  • 控除証明書類(社会保険料、生命保険料、地震保険料、医療費等)
  • 家族関係・所得要件の確認資料(特定親族特別控除等の判定で必要)
  • 既提出の準確定申告の控え、申告時点の計算根拠

進め方のコツ

  • いったん期限どおりに提出し、施行後に落ち着いて更正の請求で上乗せ適用を図る
  • 相続や転居など他手続と並行するため、期限管理と責任分担を明確化

8. よくある質問(FAQ)

Q. 11月中に提出した準確定申告で払い過ぎになった分は戻る?

改正後の基礎控除の見直し等を適用することで還付が生じる場合は、更正の請求(または訂正申告)により還付を受けられます。還付の有無・額は収入構成や家族状況、他の控除との関係で変わります。

Q. 更正の請求と訂正申告のどちらを使えばいい?

既に提出した準確定申告の法定申告期限が到来していなければ訂正申告で対応可能です。到来後は更正の請求を行います。

9. まずはシミュレーターで影響を確認

実際に計算してみましょう。基礎控除の段階的適用や新設控除の有無により、還付・追加納付が変わります。いったん期限どおり提出したうえで、施行後に正しい控除額で更正の請求を行う方針が基本です。

まとめ

  • 11月30日以前に提出する準確定申告では、提出時点で改正(基礎控除の見直し等)は適用不可。
  • 施行後(12月1日以後)、更正の請求(または期限内の訂正申告)で改正の適用が可能。
  • 予定納税の減額申請(12月1日以前期限分)には改正は使えない。
  • 影響範囲(基礎控除、給与所得控除、特定親族特別控除、扶養親族等の所得要件等)を整理し、期限内に正しく手続。

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