準確定申告の特定親族特別控除はこう書く!書面・e-Taxの実務手順
このような質問をよく見かけます。「12月に提出する準確定申告で特定親族特別控除は使える?」「申告書第一表のどこに金額を書くの?」多くの方がこのような疑問をお持ちかと思います。
国税庁Q&A「7-3」によれば、令和7年12月1日以後に提出する令和7年分の準確定申告では、特定親族特別控除の適用を受けられます。令和7年中は令和6年分様式を用いるため、記載位置に工夫が必要です。本記事では、書面・e-Taxの双方での具体的な記載手順に加え、判定基準・ケーススタディ・よくあるミスと回避策まで包括的に解説します。
1. 制度の背景と適用範囲(サマリー)
- 対象:居住者が生計を一にする19歳以上23歳未満の親族(配偶者・青色/白色事業専従者を除く、里子を含む)
- 所得要件:合計所得金額58万円超123万円以下(給与収入のみなら概ね113万円超〜)
- 控除額:最大63万円(所得金額に応じて逓減)
- 適用時期:令和7年12月1日以後提出の令和7年分準確定申告から適用
- 11月30日以前に提出した場合:施行後に更正の請求で適用(7-1参照)
2. 書面提出の記載手順(過渡期様式での対応)
- 申告書第一表の「扶養控除」欄の項目名を抹消し、余白に「特定親族特別控除」と記載
- 同欄の金額欄に、特定親族特別控除額を記載
- 扶養控除の記載も必要な場合は、項目名は抹消せず、同欄を二段書きにして
- 上段に扶養控除額
- 下段に特定親族特別控除額
書面例(イメージ)
【扶養控除】(抹消) → 【特定親族特別控除】 630,000円
(扶養控除も必要な場合)
上段:扶養控除 380,000円
下段:特定親族特別控除 630,000円
3. e-Tax提出の入力手順(推奨運用)
- 申告書第一表の「扶養控除」欄に、特定親族特別控除額を入力
- 扶養控除の入力も必要な場合:扶養控除額と特定親族特別控除額の合算額を入力し、申告書等送信票(兼送付書)の「特記事項」に内訳を記載
特記事項の記載例
特定親族特別控除額630,000円(扶養控除額380,000円、特定親族特別控除額630,000円)
4. 適用判定チェックリスト(現場で使える要点)
- 年齢要件:申告年の12月31日現在で19歳以上23歳未満か
- 所得要件:合計所得金額が58万円超123万円以下か(給与のみなら概ね113万円超〜)
- 扶養関係:生計を一にしているか(仕送り・同居など実態で判断)
- 排他関係:扶養控除との重複適用をしていないか(19〜23歳は特定親族特別控除でカバー)
- 証憑:年齢・在学・所得を確認できる書類の準備はあるか
5. ケーススタディ
ケースA:大学生の子(20歳、アルバイト年収120万円)
- 給与所得:1,200,000円 − 550,000円 = 650,000円(合計所得金額)
- 所得要件:650,000円は58万円超〜123万円以下 → 適用可
- 控除額:所得階層に応じた額(最大630,000円)
- 記載:書面→扶養控除欄で二段書き、e-Tax→扶養控除欄に入力+特記事項で内訳
ケースB:専門学校生(22歳、年収100万円+雑所得10万円)
- 給与所得:1,000,000円 − 550,000円 = 450,000円
- 合計所得金額:450,000円 + 100,000円 = 550,000円(58万円超ではない)
- 所得要件を満たさないため、特定親族特別控除は不可(扶養控除等の可否を検討)
ケースC:23歳の誕生日が申告年12月31日
- 判定基準日は12月31日現在。23歳到達で要件外となるため注意
6. よくあるミスと回避策
- 重複適用:特定親族特別控除と扶養控除を同一人物に二重計上 → 片方のみ
- 年齢判定の誤り:基準日を取り違え → 12月31日現在で厳密に判定
- 所得見積りの不足:アルバイト+雑所得の合算漏れ → 年間の合計所得金額で判断
- e-Taxで内訳未記載:合算入力だけで特記事項が空欄 → 内訳の明記を徹底
7. 実務ヒント
- 申告書提出前に、対象者・年齢・所得の三拍子をダブルチェック
- 在学証明や収入証明などのコピーを保管し、照会対応に備える
- 過渡期は様式の表示が旧仕様でも、入力・特記事項で正確に反映できる
まとめ
- 12月1日以後の準確定申告では特定親族特別控除の適用が可能
- 書面:扶養控除欄を工夫して記載(抹消/二段書き)
- e-Tax:扶養控除欄に入力。必要に応じて特記事項で内訳明示
- 判定・証憑・重複防止を徹底し、実務のミスを未然に防ぐ