税制全般

2025年12月から新設!特定親族特別控除で最大63万円減税

令和7年度税制改正で新設される特定親族特別控除について詳しく解説。19歳以上23歳未満の子どもがいる世帯が対象で、最大63万円の所得控除が受けられます。

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2025年12月から新設!特定親族特別控除で最大63万円減税

大学生や専門学校生の子どもがいるご家庭から、このような相談をよく受けます。「19歳を過ぎた子どもの扶養控除が一般扶養控除の38万円になってしまい、高校生のときの63万円(特定扶養控除)に比べて税負担が重くなった」「大学の授業料が高額なのに、税制上のメリットが少なくて困っている」

実は、こうした子育て世帯の悩みを解決する新しい控除制度が、2025年12月1日から始まることをご存知でしょうか。それが「特定親族特別控除」です。

この記事では、令和7年度税制改正で新設される特定親族特別控除について、対象となる条件から具体的な控除額、申告手続きまで詳しく解説します。19歳以上23歳未満の子どもがいるご家庭にとって、大きな減税効果が期待できる制度です。

特定親族特別控除とは?新設される控除制度の概要

特定親族特別控除は、令和7年度税制改正により新たに創設される所得控除制度です。2025年12月1日以降(令和7年分所得税)から適用が開始されます。

制度創設の背景

従来の扶養控除制度では、19歳から22歳の子どもは一般扶養控除(38万円)の対象となり、16歳から18歳の特定扶養控除(63万円)に比べて控除額が少なくなっていました。しかし、この年齢層は大学や専門学校に通うケースが多く、教育費負担が重い時期でもあります。

特定親族特別控除は、こうした教育費負担の実態を踏まえ、一定の所得範囲内の19歳以上23歳未満の親族に対して、新たな控除制度を設けることで、子育て世帯の税負担軽減を図る制度です。

適用時期と対象

  • 適用開始: 2025年12月1日以降(令和7年分所得税から)
  • 対象税目: 所得税、個人住民税
  • 控除方式: 所得控除(課税所得から控除額を差し引く)

特定親族の定義と適用条件

特定親族特別控除を受けるためには、対象となる親族が「特定親族」の要件を満たす必要があります。

特定親族の要件

特定親族とは、以下のすべての条件を満たす親族を指します:

  1. 居住者と生計を一にしている
  2. 年齢が19歳以上23歳未満
  3. 合計所得金額が58万円超123万円以下
  4. 以下の人は除外される
    • 配偶者
    • 青色事業専従者として給与の支払を受ける人
    • 白色事業専従者

所得要件の詳細

特定親族の合計所得金額は「58万円超123万円以下」である必要があります。給与収入のみの場合、以下の収入金額に対応します:

  • 合計所得金額58万円超 = 給与収入123万円超
  • 合計所得金額123万円以下 = 給与収入188万円以下

つまり、給与収入が123万円超188万円以下の19歳以上23歳未満の親族が対象となります。

里子も対象に含まれる

なお、親族には児童福祉法の規定により養育を委託された、いわゆる里子も含まれます。血縁関係だけでなく、法的な養育関係にある子どもも制度の対象となります。

控除額の詳細な仕組み

特定親族特別控除額は、特定親族の合計所得金額に応じて段階的に設定されており、最大63万円の控除を受けることができます。

控除額一覧表

特定親族の合計所得金額給与収入の場合特定親族特別控除額
58万円超85万円以下123万円超150万円以下63万円
85万円超90万円以下150万円超155万円以下61万円
90万円超95万円以下155万円超160万円以下51万円
95万円超100万円以下160万円超165万円以下41万円
100万円超105万円以下165万円超170万円以下31万円
105万円超110万円以下170万円超175万円以下21万円
110万円超115万円以下175万円超180万円以下11万円
115万円超120万円以下180万円超185万円以下6万円
120万円超123万円以下185万円超188万円以下3万円

段階的減額の仕組み

控除額は特定親族の所得が増えるにつれて段階的に減額される仕組みになっています。これは、一定の所得を超えると急激に控除がなくなる「所得の崖」を避け、なめらかな控除の減額を実現するためです。

最も控除額が大きいのは、特定親族の合計所得金額が58万円超85万円以下(給与収入123万円超150万円以下)の場合で、63万円の控除を受けることができます。

具体的なメリットと税額軽減効果

特定親族特別控除による実際の税負担軽減効果を、具体的なケースで見てみましょう。

ケース1:大学2年生の子どもがアルバイトで年収140万円の場合

  • 世帯主の年収: 600万円(所得税率20%、住民税率10%)
  • 特定親族: 20歳の子ども(大学生)
  • 子どもの年収: 140万円(合計所得金額75万円)

適用される控除額: 63万円

税負担軽減効果:

  • 所得税軽減額: 63万円 × 20% = 12万6,000円
  • 住民税軽減額: 63万円 × 10% = 6万3,000円
  • 合計軽減額: 18万9,000円

ケース2:専門学校生の子どもがパートで年収170万円の場合

  • 世帯主の年収: 500万円(所得税率20%、住民税率10%)
  • 特定親族: 21歳の子ども(専門学校生)
  • 子どもの年収: 170万円(合計所得金額105万円)

適用される控除額: 31万円

税負担軽減効果:

  • 所得税軽減額: 31万円 × 20% = 6万2,000円
  • 住民税軽減額: 31万円 × 10% = 3万1,000円
  • 合計軽減額: 9万3,000円

従来制度との比較

従来の一般扶養控除(38万円)と比較すると、特定親族特別控除の減税効果の大きさがよくわかります。

ケース1の場合の比較:

  • 従来の一般扶養控除: 38万円 × 30% = 11万4,000円
  • 特定親族特別控除: 63万円 × 30% = 18万9,000円
  • 差額: 7万5,000円の追加減税効果

年末調整での申告手続き

特定親族特別控除の適用を受けるためには、適切な申告手続きが必要です。

年末調整での手続き

年末調整で特定親族特別控除の適用を受ける場合は、給与の支払者(勤務先)に「特定親族特別控除申告書」を提出する必要があります。

提出時期: 年末調整時(通常11月〜12月) 必要書類: 特定親族特別控除申告書

申告書の記載内容

特定親族特別控除申告書には、以下の情報を記載します:

  1. 特定親族の氏名
  2. 特定親族の年齢(12月31日現在)
  3. 特定親族の合計所得金額
  4. 続柄
  5. 同居・別居の別

確定申告での手続き

年末調整を行わない場合や、年末調整後に特定親族の所得が判明した場合は、確定申告で特定親族特別控除を申告します。

提出書類: 確定申告書および特定親族特別控除に関する明細書 提出期限: 翌年3月15日

注意すべきポイントと落とし穴

特定親族特別控除を適用する際に注意すべき点をまとめました。

所得の判定時期

特定親族の合計所得金額は、12月31日現在で判定されます。年の途中で収入が変動する場合は、年間を通じた合計所得金額で判定することになります。

他の控除との重複適用

同一の親族について、以下の控除を重複して適用することはできません:

  • 一般扶養控除
  • 特定扶養控除(16歳以上18歳以下)
  • 障害者控除(重複適用は可能)

所得制限の境界線

特定親族の合計所得金額が123万円を超えると、特定親族特別控除の適用を受けることができません。この境界線付近では、わずかな収入の違いで控除額が大きく変わる可能性があります。

アルバイト収入の年間管理

大学生のアルバイト収入が188万円(合計所得金額123万円)を超えると、特定親族特別控除の対象外になります。年間を通じて収入管理を行い、必要に応じて収入調整を検討することが重要です。

まとめ

特定親族特別控除は、19歳以上23歳未満の子どもがいる世帯にとって、大きな税負担軽減効果をもたらす新しい制度です。

制度のポイント:

  • 2025年12月1日から適用開始
  • 19歳以上23歳未満で合計所得金額58万円超123万円以下の親族が対象
  • 最大63万円の所得控除
  • 年末調整または確定申告で申告が必要

活用のコツ:

  • 特定親族の年間収入を188万円以下に管理
  • 年末調整時に忘れずに申告書を提出
  • 複数の子どもがいる場合は、それぞれについて控除適用を検討

大学や専門学校に通う子どもの教育費負担が重い時期に、この新しい控除制度を有効活用することで、家計の負担軽減を図ることができます。制度の詳細を理解し、適切な手続きを行って、税制上のメリットを最大限に活用しましょう。

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