非居住者の基礎控除額はいくら?2025年改正の取扱いまとめ
このような質問をよく見かけます。「令和7年は1年を通じて海外勤務(非居住者)だが、国内の不動産所得の確定申告を納税管理人経由で行う予定。基礎控除額はいくら?」海外赴任や投資所得が絡むケースで、取扱いを誤りがちです。
国税庁Q&A「7-5」によれば、令和7年度税制改正で創設された基礎控除の加算(租税特別措置法第41条の16の2)は居住者にのみ適用されます。したがって、非居住者の基礎控除額は次のとおりです。
1. 非居住者の基礎控除額(令和7年分以後)
- 合計所得金額2,350万円以下:58万円(改正前48万円)
- 合計所得金額2,350万円超:改正なし(従来どおり)
ポイント:非居住者には「加算」は適用されません。加算は居住者限定です。
2. 年の途中で非居住者となる場合の例外(居住者期間の加算)
- 年の中途で国内に住所・居所を有しないこととなる場合に、納税管理人を通じて行う確定申告では「居住者期間」を有するため、その期間の合計所得金額に応じた加算の適用あり(租税特別措置法第41条の16の2)
具体例
- 1〜8月:居住者、9〜12月:非居住者、国内不動産所得100万円
- 居住者期間に対応する所得区分で基礎控除を段階適用(按分の考え方を採用)
- 非居住者期間に係る部分は加算なし(58万円の枠外)
実務では、国内源泉所得の発生時期・区分と居住者期間の対応関係を明確化し、メモで根拠を残すと照会対応がスムーズです。
3. 実務のチェックポイント
- 居住者・非居住者の判定を「年の通期」か「一部期間」かで区分
- 納税管理人の選任と、申告様式・適用条文(所法86、措法41条の16の2)の確認
- 控除額の根拠(加算の適用対象外/対象)のメモを添付・保存して照会を防止
- 還付口座の確保(国内口座推奨)と、納税管理人への委任範囲の明確化
4. ケーススタディ(数値で理解)
ケースA:年通期で非居住者(国内不動産所得あり)
- 合計所得金額:200万円(国内不動産)
- 基礎控除:58万円(加算なし)
ケースB:年途中で非居住者化(居住者期間8ヶ月)
- 国内不動産所得:240万円(年額)、月次20万円×12
- 居住者期間相当の所得:20万円×8=160万円 → 居住者期間に段階適用(例:該当区分の金額)
- 非居住者期間相当:20万円×4=80万円 → 加算なし枠(58万円の体系外)
具体の按分・適用は個別事実の確認が不可欠。計算根拠を添付すると安全です。
5. FAQ(よくある質問)
Q1. 非居住者でも58万円の基礎控除をまるごと使える?
A1. 令和7年分以後、非居住者は「加算なし」の体系で58万円が基本枠です。ただし合計所得金額2,350万円超は従来どおり非適用です。
Q2. 居住者期間の加算は自動でやってもらえる?
A2. 自動ではありません。居住者・非居住者の期間区分、所得の配賦を示し、適用条文を明確にして申告してください。
Q3. 還付金は海外口座で受け取れる?
A3. 原則は国内口座。納税管理人の口座か、ご自身の国内口座を準備しましょう。
まとめ
- 非居住者(年通期)は加算の適用なし。合計所得金額2,350万円以下なら58万円が基礎控除額
- 年途中で非居住者となる場合は、居住者期間分に限り加算の適用可能
- 判定・条文・納税管理人・口座の4点をセットで整えると実務がスムーズ
関連記事
(出典)国税庁「令和7年度税制改正(基礎控除の見直し等関係)Q&A」7-5、特設サイト