税制全般

株式譲渡所得税を完全解説!税率20.315%の計算方法と節税対策

株式を売却した際の税金について徹底解説。申告分離課税20.315%の内訳、復興特別所得税の適用期間、具体的な計算例、確定申告の手続き、M&A時の注意点など実用的な情報をお伝えします。

13分で読める
#株式譲渡所得#申告分離課税#復興特別所得税#確定申告#投資

株式譲渡所得税を完全解説!税率20.315%の計算方法と節税対策

「株を売って利益が出たけど、税金はいくらかかるの?」「M&Aで株式を譲渡する予定だが、税金の計算方法がわからない」「復興特別所得税って何?いつまで続くの?」

このような疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。株式投資やベンチャー企業への投資が身近になった現在、株式譲渡時の税金について正しく理解することは非常に重要です。

この記事では、株式譲渡所得税の基本的な仕組みから具体的な計算方法、節税対策、確定申告の手続きまで、実用的な観点から徹底解説します。あなたの投資活動に役立つ税務知識を身につけましょう。

株式譲渡所得税の基本構造

株式譲渡所得に対する税金は、申告分離課税という特別な税制が適用されます。給与所得などの総合課税とは別に計算され、一律の税率が適用される点が特徴です。

税率の内訳:合計20.315%

株式譲渡所得税の税率20.315%の内訳は以下のとおりです:

所得税:15%

国税として課される基本的な所得税です。株式譲渡益に対して一律15%が適用されます。

復興特別所得税:0.315%

正式には「復興特別所得税」といい、東日本大震災からの復興財源確保のために2013年1月1日から2037年12月31日まで適用される税金です。所得税額の2.1%相当額(15% × 2.1% = 0.315%)となります。

住民税:5%

都道府県民税と市町村民税を合わせて5%が課されます。

申告分離課税の特徴

株式譲渡所得は申告分離課税のため、以下の特徴があります:

  • 他の所得と合算されない:給与所得や事業所得とは別に計算
  • 累進課税ではない:所得額に関係なく一律20.315%
  • 損益通算が可能:株式譲渡損失と利益を相殺できる
  • 繰越控除制度あり:損失は3年間繰り越し可能

株式譲渡所得の計算方法

株式譲渡所得の基本的な計算式は以下のとおりです:

株式譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用

具体的な計算例

ケース1:個人投資家のAさんの場合

投資状況

  • 取得価額:1株10,000円で100株購入(合計1,000,000円)
  • 売却価額:1株15,000円で100株売却(合計1,500,000円)
  • 売却手数料:5,000円

計算過程

  1. 譲渡所得 = 1,500,000円 - 1,000,000円 - 5,000円 = 495,000円
  2. 所得税 = 495,000円 × 15% = 74,250円
  3. 復興特別所得税 = 495,000円 × 0.315% = 1,559円
  4. 住民税 = 495,000円 × 5% = 24,750円
  5. 合計税額 = 100,559円

ケース2:M&A時の株式譲渡(創業者のBさん)

譲渡状況

  • 保有株式:自社株1,000株(取得費:1株1,000円)
  • 譲渡価額:1株50,000円でM&Aにより売却
  • M&A仲介手数料:500,000円

計算過程

  1. 譲渡所得 = 50,000,000円 - 1,000,000円 - 500,000円 = 48,500,000円
  2. 所得税 = 48,500,000円 × 15% = 7,275,000円
  3. 復興特別所得税 = 48,500,000円 × 0.315% = 152,775円
  4. 住民税 = 48,500,000円 × 5% = 2,425,000円
  5. 合計税額 = 9,852,775円

確定申告の必要性と手続き

確定申告が必要なケース

以下の場合、確定申告が必要です:

特定口座以外での取引

  • 一般口座での株式売買
  • 相対取引による株式譲渡
  • M&Aによる株式譲渡

特定口座(源泉徴収なし)での取引

  • 年間の譲渡所得が20万円を超える場合

損失の繰越控除を受ける場合

  • 特定口座(源泉徴収あり)でも申告により繰越可能

確定申告の時期と提出書類

申告期間

毎年2月16日から3月15日まで(土日の場合は翌営業日)

主な提出書類

  1. 確定申告書第二表・第三表
  2. 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書
  3. 特定口座年間取引報告書(特定口座利用者)
  4. 売買報告書や契約書(相対取引の場合)

節税対策と注意点

効果的な節税対策

損益通算の活用

複数の株式を保有している場合、利益の出た銘柄と損失の出た銘柄を同一年内に売却することで、税負担を軽減できます。

具体例

  • A株の利益:500,000円
  • B株の損失:200,000円
  • 課税対象:500,000円 - 200,000円 = 300,000円
  • 税額軽減効果:200,000円 × 20.315% = 40,630円

繰越控除制度の活用

株式譲渡損失は3年間繰り越すことができます。

3年間の損失繰越例

  • 1年目:損失1,000,000円(繰越)
  • 2年目:利益300,000円 → 相殺後、損失700,000円を繰越
  • 3年目:利益500,000円 → 相殺後、損失200,000円を繰越
  • 4年目:利益800,000円 → 200,000円まで相殺、600,000円が課税対象

NISA制度の活用

年間投資枠内でのNISA口座での取引は、譲渡益が非課税となります。

注意すべきポイント

復興特別所得税の適用期間

復興特別所得税は2037年12月31日まで適用されるため、長期投資戦略を立てる際は考慮に入れましょう。

法人との税率差

個人の株式譲渡所得税率は20.315%ですが、法人の場合は法人税率(約30%)が適用されるため、投資主体の選択が重要です。

相続時の取得費

相続により取得した株式の取得費は、相続時の時価または被相続人の取得費のいずれかを選択できます。

年収や扶養への影響

給与所得者への影響

株式譲渡所得は申告分離課税のため、給与所得とは合算されません。したがって、以下の点に注意が必要です:

社会保険料への影響なし

株式譲渡所得は社会保険料の算定対象外のため、厚生年金や健康保険料には影響しません。

住民税の影響

住民税の株式譲渡所得割は所得割と別に計算されますが、均等割の非課税判定には影響する場合があります。

扶養判定への影響

税法上の扶養

株式譲渡所得は扶養判定の所得に含まれません。ただし、配当所得を総合課税で申告する場合は扶養判定に影響します。

社会保険上の扶養

株式譲渡所得は社会保険の扶養判定にも含まれません

よくある質問と実践的アドバイス

Q1: 特定口座(源泉徴収あり)なら確定申告は不要?

A1: 基本的には不要ですが、以下の場合は申告を検討しましょう:

  • 他の口座で損失があり、損益通算したい場合
  • 損失を翌年以降に繰り越したい場合
  • 配当所得と合わせて申告する場合

Q2: M&Aの際、株式取得側に税金はかかる?

A2: 株式を取得する側には原則として税金はかかりません。ただし、以下の点に注意:

  • 法人が取得する場合、のれんの償却が発生する可能性
  • 個人が取得する場合、将来の売却時に取得費として計上

Q3: 仮想通貨との損益通算は可能?

A3: 仮想通貨取引による所得は雑所得のため、株式譲渡所得との損益通算はできません。申告分離課税同士でのみ損益通算が可能です。

Q4: 株式譲渡益がある年の住宅ローン控除への影響は?

A4: 株式譲渡所得は申告分離課税のため、住宅ローン控除の適用に影響しません。ただし、確定申告をする場合は住宅ローン控除も忘れずに申告しましょう。

まとめ

株式譲渡所得税は一律20.315%の申告分離課税が適用され、復興特別所得税は2037年まで継続します。投資戦略を立てる際は、以下のポイントを押さえておきましょう:

  • 税率構造の理解:所得税15% + 復興特別所得税0.315% + 住民税5%
  • 節税対策の活用:損益通算と繰越控除制度の効果的な利用
  • NISA制度の活用:非課税枠を最大限に活用
  • 確定申告の準備:必要書類の整理と期限の確認

株式投資やM&Aに関わる際は、税務面での影響を事前に検討し、必要に応じて税理士などの専門家に相談することをお勧めします。適切な税務処理により、投資活動をより効率的に進めることができるでしょう。

実際に計算してみませんか?

この記事で学んだ内容を実際の数値で確認できます

年収の壁を計算する

その他の記事