106万円の壁の撤廃はいつから?政府方針と社会保険適用拡大の最新情報2025年版
「106万円の壁って、いつなくなるんですか?」このような質問をパート労働者の方からよく聞きます。実際、働く時間を調整している方にとって、この壁がいつまで続くのかは将来の働き方を考える上で非常に重要な問題です。
この記事では、106万円の壁撤廃に関する政府の最新方針と、2024年10月から始まった社会保険適用拡大の現状、そして2026年以降の検討事項について詳しく解説します。あなたの働き方プランニングに役立つ最新情報をお届けします。
現在の106万円の壁とは?基本的な仕組み
まず、現在の106万円の壁の仕組みについて確認しておきましょう。
社会保険加入の5つの要件
106万円の壁による社会保険加入には、以下5つの要件をすべて満たす必要があります:
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上(年収106万円相当)
- 2か月を超えて勤務する見込み
- 学生ではない
- 従業員数が51人以上の企業に勤務
この中で「106万円の壁の撤廃」とは、主に5番目の企業規模要件の撤廃を指しています。
2024年10月からの変更点
2024年10月から、企業規模要件が「従業員数101人以上」から「51人以上」に拡大されました。これにより、約65万人の短時間労働者が新たに社会保険加入の対象となりました。
政府方針:段階的撤廃への道筋
社会保障審議会での議論
厚生労働省の社会保障審議会では、企業規模要件の段階的撤廃について継続的に議論されています。政府の基本方針は以下のとおりです:
短期的目標(2024年10月実施済み)
- 企業規模要件を「101人以上」から「51人以上」に変更
- 対象者の大幅な拡大
中期的検討(2026年10月予定)
- さらなる企業規模要件の引き下げ
- 完全撤廃の可能性を含む検討
長期的展望
- 雇用形態にかかわらない社会保険適用の実現
- 働き方の多様化への対応
2026年10月からの検討事項
確定事項と検討事項の分離
確定していること:
- 2026年10月に向けて企業規模要件のさらなる見直しを検討
- 社会保障審議会での継続審議
まだ確定していないこと:
- 具体的な企業規模の数値(20人以上、10人以上など)
- 完全撤廃の実施時期
- 段階的撤廃か一括撤廃かの方針
厚生労働省の検討スケジュール
厚生労働省は以下のスケジュールで検討を進めています:
2025年中
- 社会保障審議会での詳細検討
- 関係団体へのヒアリング実施
- 影響分析の実施
2026年前半
- 最終的な改正案の取りまとめ
- 政省令改正の準備
2026年10月
- 新たな企業規模要件の実施(予定)
完全撤廃の実現可能性分析
推進要因
働き方改革の促進
- 就業調整を行わない働き方の実現
- 女性の労働参加率向上
- 人手不足解消への貢献
社会保険制度の公平性
- 同一労働同一待遇の推進
- 企業規模による格差の解消
課題・障壁
中小企業への負担
- 社会保険料の事業主負担増加
- 労務管理コストの増大
- 経営への影響
労働者の手取り減少
- 社会保険料負担による手取り収入の減少
- 短期的な家計への影響
ZEIKABEシミュレーターで確認する影響
現在の106万円の壁での計算例
月収8.8万円(年収105.6万円)の場合:
- 社会保険料負担: なし
- 手取り額: 月額約8.7万円
月収9万円(年収108万円)で51人以上企業の場合:
- 健康保険料: 月額約4,500円
- 厚生年金保険料: 月額約8,250円
- 雇用保険料: 月額約270円
- 手取り額: 月額約7.7万円(約1万円減少)
完全撤廃後の影響予測
仮に企業規模要件が完全撤廃された場合:
50人以下企業で働くパート労働者への影響
- 現在は106万円を超えても社会保険加入義務なし
- 完全撤廃後は月収8.8万円超で加入必要
- 推定対象者: 約200万人
手取り収入の変化
年収120万円の場合(完全撤廃後):
- 社会保険料: 年額約15.6万円
- 手取り減少: 年額約15.6万円
- ただし、将来の年金受給額は増加
企業への影響と対応策
中小企業への影響
負担増加の要因
- 社会保険料の事業主負担(従業員負担と同額)
- 労務管理業務の増加
- システム対応コスト
対応策の検討
- 時給アップによる実質手取り維持
- 労働時間の柔軟な調整制度
- 社会保険加入メリットの説明
大企業での対応事例
すでに51人以上企業では以下のような対応が見られます:
従業員へのサポート
- 社会保険加入のメリット説明
- 将来の年金受給額試算提供
- 働き方の選択肢拡大
制度設計の見直し
- 短時間正社員制度の導入
- 労働時間の柔軟化
- 給与体系の見直し
政府の支援策
中小企業への支援
キャリアアップ助成金
- 短時間労働者の社会保険適用促進コース
- 最大70万円の助成(企業規模により異なる)
労務管理システム導入支援
- IT導入補助金の活用
- デジタル化支援
労働者への支援
就業調整助成制度
- 一時的な収入増加への配慮
- 連続2年間の特例措置
今後のタイムライン予測
2025年(令和7年)
- 社会保障審議会での継続検討
- 具体的な改正案の検討開始
- 関係団体との調整
2026年(令和8年)
- 10月に企業規模要件のさらなる引き下げ実施予定
- 対象企業数:30人以上または20人以上の可能性
- 完全撤廃は2028年以降の見込み
2027年以降
- 完全撤廃に向けた最終段階
- 全企業での106万円基準適用
働く人への実践的アドバイス
現在51人以上企業で働く方
社会保険加入のメリットを活用
- 傷病手当金の受給権利
- 出産手当金の受給権利
- 将来の厚生年金受給額増加
働き方の見直し
- 年収調整から時間調整への転換
- スキルアップによる時給向上
- 長期的なキャリア形成
50人以下企業で働く方
2026年改正への準備
- 企業規模要件変更の可能性に備える
- 社会保険加入時の家計への影響を試算
- 働き方の選択肢を事前検討
情報収集の継続
- 政府発表の定期チェック
- 勤務先の企業規模確認
- 制度変更への早期対応
年収の壁計算ツールでの確認方法
実際にあなたの状況での影響を確認したい場合は、年収の壁計算ツールをご活用ください:
- 現在の年収を入力
- 企業規模(51人以上/以下)を選択
- 社会保険加入の有無を設定
- 手取り額の変化を確認
特に106万円前後で働いている方は、社会保険加入による手取り減少と将来の年金増額のバランスを確認することをおすすめします。
最新情報の入手方法
公式情報源
厚生労働省
- 社会保障審議会年金部会の議事録
- 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A
政府広報
- 内閣府の働き方改革関連情報
- 首相官邸での政策発表
業界団体の動向
- 日本商工会議所の意見書
- 全国商工会連合会の要望書
- 労働組合の政策提言
まとめ
106万円の壁の完全撤廃については、以下のポイントを押さえておきましょう:
現状(2025年)
- 51人以上企業では既に適用済み
- 50人以下企業では従来通り130万円が基準
近い将来(2026年10月予定)
- 企業規模要件のさらなる引き下げを検討
- 具体的な数値は2025年中に決定予定
長期的展望(2027年以降)
- 企業規模要件の完全撤廃の可能性
- 全企業での106万円基準適用
106万円の壁の撤廃は段階的に進行中です。現在の政府方針では2026年10月にさらなる企業規模要件の引き下げが検討されており、完全撤廃は2027年以降になる見込みです。
働く皆さんは、この制度変更を「働き方を見直すチャンス」として捉え、長期的なキャリア形成と家計プランニングを進めることをおすすめします。年収の壁計算ツールを活用して、様々なシナリオでの手取り額を確認し、最適な働き方を見つけてください。