税制全般

令和8年分から源泉徴収を要しない公的年金等の基準はどう変わる?2026年改正対応ガイド

2026年(令和8年分)から変更される源泉徴収を要しない公的年金等の判定基準を徹底解説。基礎的控除額改正による影響、年金額別判定例、年金受給者への実務的な影響を詳しく説明します。

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令和8年分から源泉徴収を要しない公的年金等の基準変更!年金受給者が知っておくべき重要な改正内容

年金を受給されている方から、このような質問をよく見かけます。

「源泉徴収されない年金額の基準が令和8年から変わると聞いたけれど、具体的にどう変わるの?」

「これまで源泉徴収されていなかった年金が、来年から徴収されることになるの?」

多くの年金受給者の方がこのような悩みをお持ちかと思います。実際に、令和7年度税制改正により、令和8年分以後の公的年金等について、源泉徴収を要しない年金の基準額が大幅に引き上げられました。

この改正は年金受給者にとって実質的に減税効果のある変更ですが、判定基準の仕組みが複雑で、自分の年金がどのような影響を受けるのか分からない方も多いのではないでしょうか。

本記事では、令和8年分から変更される源泉徴収を要しない公的年金等の判定基準について、年金額別の具体例を交えながら詳しく解説します。年金受給者の方、年金支払機関の担当者の方、そして税務に携わる専門家の方にとって有益な情報をお届けします。

源泉徴収を要しない公的年金等制度の基本概要

制度の目的と仕組み

源泉徴収を要しない公的年金等制度とは、年金額が一定基準以下の場合に、年金支払時の源泉徴収を行わない制度です。この制度により、年金額が比較的少ない受給者は源泉徴収されることなく年金を受け取ることができます。

判定のタイミング

判定は年金の支払いごとに行われ、その年中に支払を受けるべき公的年金等の合計額が基準額以下であれば、源泉徴収は行われません。

制度適用の前提条件

この制度の適用を受けるためには、年金受給者が「扶養親族等申告書」を年金支払者に提出している必要があります。申告書を提出していない場合は、年金額にかかわらず源泉徴収が行われます。

令和8年分以後の判定基準の変更内容

改正の背景

令和7年度税制改正により基礎控除額が引き上げられたことに伴い、源泉徴収を要しない公的年金等の基準額も改正されました。この改正により、より多くの年金受給者が源泉徴収を受けることなく年金を受給できるようになります。

具体的な基準額の変更

65歳以上の受給者

区分令和8年分以後【参考】令和7年分以前変更額
通常205万円158万円+47万円
2階部分のみ127万円80万円+47万円

65歳未満の受給者

区分令和8年分以後【参考】令和7年分以前変更額
通常155万円108万円+47万円

改正による実質的な効果

この改正により、年間47万円の範囲で新たに源泉徴収を受けない年金受給者が増加することになります。これは実質的な減税効果といえるでしょう。

基礎的控除額の改正による影響の詳細

基礎的控除額の算定式

源泉徴収を要しない公的年金等の判定では、以下の基礎的控除額が使用されます:

65歳以上の受給者(令和8年分)

  • 242万円以下:公的年金等の月割額×25%+105,000円(175,000円未満の場合は175,000円)
  • 242万円超:公的年金等の月割額×25%+100,000円(165,000円未満の場合は165,000円)

65歳未満の受給者(令和8年分)

  • 213万円以下:公的年金等の月割額×25%+105,000円(130,000円未満の場合は130,000円)
  • 213万円超:公的年金等の月割額×25%+100,000円(125,000円未満の場合は125,000円)

2階部分のみの年金の特例

厚生年金など2階部分のみの年金については、より低い基準額が適用されます:

65歳以上:127万円(令和8年分以後) 65歳未満:適用なし

この特例は、基礎年金を受給していない方の厚生年金等に適用されます。

対象となる公的年金等の具体的範囲

改正対象となる年金の種類

源泉徴収を要しない公的年金等の改正対象となるのは、以下の年金です:

  1. 厚生労働大臣が支給する公的年金等

    • 国民年金
    • 厚生年金
    • 共済年金
  2. 国家公務員共済組合連合会が支給する公的年金等

  3. 地方公務員共済組合等が支給する公的年金等

  4. 日本私立学校振興・共済事業団が支給する公的年金等

  5. 恩給法による公的年金等

対象外となる年金

以下の年金は今回の改正対象外です:

  • 確定給付企業年金法に基づく年金
  • 確定拠出年金法に基づく年金
  • 個人年金保険

これらは企業年金や私的年金に分類されるため、公的年金等の範囲には含まれません。

年金額別の判定例とシミュレーション

ケース1:65歳以上・年金額180万円の場合

改正前(令和7年分以前)

  • 基準額:158万円
  • 判定結果:180万円 > 158万円 → 源泉徴収あり

改正後(令和8年分以後)

  • 基準額:205万円
  • 判定結果:180万円 < 205万円 → 源泉徴収なし

このケースでは、改正により源泉徴収が不要となります。

ケース2:65歳未満・年金額130万円の場合

改正前(令和7年分以前)

  • 基準額:108万円
  • 判定結果:130万円 > 108万円 → 源泉徴収あり

改正後(令和8年分以後)

  • 基準額:155万円
  • 判定結果:130万円 < 155万円 → 源泉徴収なし

このケースでも、改正により源泉徴収が不要となります。

ケース3:65歳以上・2階部分のみ100万円の場合

改正前(令和7年分以前)

  • 基準額:80万円
  • 判定結果:100万円 > 80万円 → 源泉徴収あり

改正後(令和8年分以後)

  • 基準額:127万円
  • 判定結果:100万円 < 127万円 → 源泉徴収なし

2階部分のみの年金についても、大幅に基準額が引き上げられています。

扶養親族等申告書との関係

申告書提出の重要性

源泉徴収を要しない公的年金等の判定を受けるためには、必ず「扶養親族等申告書」を年金支払者に提出する必要があります。

令和8年分申告書の変更点

令和8年分の扶養親族等申告書では、記載事項に一部変更があります:

主な変更点

  • 「控除対象扶養親族」から「源泉控除対象親族」への変更
  • 特定親族(19歳以上23歳未満)の取扱いの明確化

申告書未提出の場合のリスク

扶養親族等申告書を提出していない場合:

  • 年金額にかかわらず源泉徴収が行われる
  • 源泉徴収税率は一律10.21%(復興特別所得税込み)
  • 確定申告により還付を受ける必要がある

年金支払機関の実務対応

システム改修の必要性

年金支払機関では、令和8年分から適用される新しい基準額に対応するため、以下のシステム改修が必要です:

  1. 判定基準額の更新
  2. 基礎的控除額計算ロジックの変更
  3. 年齢区分別処理の見直し

受給者への通知義務

年金支払機関は、源泉徴収の取扱いが変更となる受給者に対して、適切な説明と通知を行う必要があります。

経過措置の取扱い

令和7年分までの源泉徴収については従来の基準が適用され、令和8年1月支払分から新基準が適用されます。

年金受給者への影響と注意点

プラス面の影響

  1. 源泉徴収の免除

    • 新たに約47万円の範囲で源泉徴収が不要
    • 手取り年金額の実質的な増加
  2. 確定申告の簡素化

    • 源泉徴収されない場合、原則として確定申告不要
    • 税務手続きの負担軽減

注意すべき点

  1. 他の所得との合算

    • 年金以外に所得がある場合は確定申告が必要な場合がある
    • 医療費控除等を受ける場合は確定申告を検討
  2. 住民税への影響

    • 所得税は非課税でも住民税は課税される場合がある
    • 市町村への申告が必要な場合がある

実務上の対応策

年金受給者が行うべき対応

  1. 扶養親族等申告書の確実な提出
  2. 源泉徴収票の保管と確認
  3. 必要に応じた確定申告の実施

確定申告の必要性判定

確定申告が不要な場合

以下の条件を全て満たす場合、確定申告は不要です:

  1. 公的年金等の収入金額が400万円以下
  2. 公的年金等以外の所得金額が20万円以下
  3. 源泉徴収を要しない公的年金等に該当

確定申告が必要な場合

以下のような場合は確定申告が必要です:

  1. 公的年金等の収入金額が400万円超
  2. 公的年金等以外の所得が20万円超
  3. 医療費控除等の所得控除を追加で受ける場合
  4. 源泉徴収税額がある場合で還付を受ける場合

住民税の申告について

所得税の確定申告が不要でも、以下の場合は住民税の申告が必要な場合があります:

  1. 公的年金等以外の所得がある場合
  2. 各種控除を追加で受ける場合
  3. 市町村から申告を求められた場合

よくある質問と対応策

Q1:改正により源泉徴収されなくなったが、確定申告は必要?

A1: 公的年金等の収入が400万円以下で、他の所得が20万円以下であれば、原則として確定申告は不要です。ただし、医療費控除等を受ける場合や住民税の申告が必要な場合があります。

Q2:扶養親族等申告書を提出し忘れた場合はどうなる?

A2: 年金額にかかわらず源泉徴収が行われます。この場合、確定申告により還付を受けることができますので、必ず確定申告を行ってください。

Q3:企業年金も今回の改正対象になる?

A3: 確定給付企業年金法や確定拠出年金法に基づく企業年金は対象外です。公的年金等のみが対象となります。

Q4:年の途中で65歳になった場合の判定は?

A4: 年末時点(12月31日)の年齢で判定されます。年の途中で65歳になった場合は、65歳以上の基準額が適用されます。

Q5:源泉徴収の取扱いが変わる通知は来る?

A5: 年金支払機関から源泉徴収の取扱いが変更となる旨の通知が送付される場合があります。通知が来ない場合でも、自動的に新基準が適用されます。

まとめ

令和8年分から適用される源泉徴収を要しない公的年金等の基準額引き上げは、多くの年金受給者にとって実質的な減税効果をもたらす重要な改正です。

改正のポイント

  • 65歳以上:205万円(従来158万円)
  • 65歳未満:155万円(従来108万円)
  • 2階部分のみ(65歳以上):127万円(従来80万円)

年金受給者が注意すべき点

  1. 扶養親族等申告書の確実な提出
  2. 源泉徴収の取扱い変更の確認
  3. 必要に応じた確定申告の実施
  4. 住民税への影響の確認

年金支払機関の対応

  1. システムの適切な改修
  2. 受給者への適切な通知
  3. 新基準による正確な判定実施

この改正により、年金受給者の税務負担が軽減される一方で、制度の理解と適切な対応が重要になります。不明な点がある場合は、年金支払機関や税務署、税理士等の専門家にご相談することをお勧めします。

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