令和7年12月1日以後に給与を受けていない人の税務手続き完全ガイド
「海外勤務から帰国したけれど、日本で給与をもらっていない期間がある場合の税金はどうなるの?」「年の途中で退職して、しばらく無職だった期間の確定申告はどうすればいいの?」
このような質問をよく見かけます。特に令和7年(2025年)12月1日以降の税制改正により、居住者として給与の支払を受けていない人への取り扱いが明確化され、多くの方が混乱されているのではないでしょうか。
海外勤務からの帰国、転職活動期間、病気での休職、起業準備期間など、一定期間給与を受けていない状況は決して珍しいことではありません。しかし、このような状況での税務手続きは複雑で、正しく理解していないと思わぬ税負担を負うことになったり、逆に受けられるはずの控除を見逃してしまったりする可能性があります。
この記事では、令和7年12月1日以後に居住者として給与の支払を受けていない人に該当するケースから、具体的な確定申告の手続き方法、各種控除制度の適用方法まで、実務で役立つ情報を詳しく解説いたします。
令和7年12月1日以後に居住者として給与を受けていない人とは
該当する具体的なケースを理解する
「令和7年12月1日以後に居住者として給与の支払を受けていない人」とは、文字通り令和7年12月1日以降に日本の居住者でありながら、給与所得を得ていない人のことを指します。
主な該当ケース:
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海外勤務からの帰国者
- 海外支社から日本本社への転勤で12月に帰国
- 海外での勤務を終了し、翌年から日本で新たな職に就く予定の方
- 留学や研修を終えて帰国し、就職活動中の方
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年末退職・転職者
- 11月末で退職し、翌年から新しい会社で勤務開始予定の方
- 年末にかけて転職活動を行っている方
- 起業準備のため年末に会社を退職した方
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休職・病気療養者
- 病気やケガで12月以降給与の支払いが停止されている方
- 育児休業や介護休業を取得している方(無給の場合)
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その他の特殊なケース
- 会社の経営悪化により一時的に給与支払いが停止されている方
- 季節労働者で冬季は無職の方
居住者の判定基準
重要なのは「居住者」としての地位です。令和7年12月1日以降に日本国内に住所を有している、または1年以上日本国内に居所を有している場合は居住者となります。
海外から帰国した場合でも、帰国日以降は居住者として扱われるため、たとえ給与を受けていなくても、この規定の対象となる可能性があります。
基礎控除と各種控除制度の適用方法
基礎控除の適用
令和7年分の基礎控除は48万円です。給与を受けていない期間があっても、年間を通じて所得がある場合は基礎控除を適用できます。
具体的な計算例:
- 1月~11月:月給30万円(年収330万円)
- 12月:給与なし
- この場合でも基礎控除48万円は満額適用可能
給与所得控除との関係
給与を受けていない期間があっても、年間の給与収入に対して給与所得控除は計算されます。
2025年分給与所得控除:
- 年収180万円以下:収入金額×40%(最低55万円)
- 年収180万円超360万円以下:収入金額×30%+18万円
- 年収360万円超660万円以下:収入金額×20%+54万円
その他の控除制度
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扶養控除
- 配偶者や親族の扶養控除は、12月31日の現況で判定
- 給与を受けていない期間があっても適用可能
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社会保険料控除
- 国民健康保険料、国民年金保険料は実際に支払った金額を控除
- 給与天引きされていない期間の保険料も対象
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生命保険料控除
- 年間を通じて支払った保険料が対象
- 給与天引きでない場合も適用可能
確定申告での取り扱いと手続き方法
確定申告の必要性
令和7年12月1日以後に給与を受けていない人でも、以下の場合は確定申告が必要です:
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年間所得が基礎控除額を超える場合
- 給与所得以外に所得がある
- 年間給与収入が103万円を超える
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源泉徴収された税額がある場合
- 給与から所得税が天引きされていた
- 過納税額の還付を受けたい場合
確定申告書の記載方法
給与所得の記載:
収入金額等:実際に受け取った給与の合計額 所得金額:給与収入から給与所得控除を差し引いた額
源泉徴収税額の記載:
- 源泉徴収票に記載された「源泉徴収税額」をそのまま記載
- 複数の会社から給与を受けていた場合は合計額
必要書類の準備
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源泉徴収票
- 給与を受けていた期間分の源泉徴収票
- 退職した会社からも必ず入手
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各種控除証明書
- 生命保険料控除証明書
- 地震保険料控除証明書
- 国民年金保険料控除証明書
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その他の所得に関する書類
- 事業所得がある場合の収支内訳書
- 不動産所得がある場合の計算書
源泉徴収票がない場合の対応方法
会社への再発行依頼
最も確実な方法は、給与を支払った会社に源泉徴収票の再発行を依頼することです。
依頼のポイント:
- 書面での正式な依頼が効果的
- 発行義務があることを伝える
- 退職した会社でも発行義務は継続
源泉徴収票がない場合の確定申告
やむを得ず源泉徴収票が入手できない場合:
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給与明細書の保管・活用
- 月々の給与明細書から年収を計算
- 源泉徴収税額も明細書から集計
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「源泉徴収票不交付の届出書」の提出
- 税務署に提出することで、税務署から会社に発行指導
- 確定申告の際に給与明細書等を添付
税務署での相談
源泉徴収票がない場合は、確定申告前に税務署に相談することをお勧めします。個別の事情に応じて適切な対応方法を教えてもらえます。
海外居住者から帰国した場合の特別な注意点
居住者認定のタイミング
海外から帰国した場合、帰国日から居住者として扱われます。令和7年12月1日以後の帰国であれば、この規定の対象となります。
重要なポイント:
- 帰国日以降の所得は日本の税務対象
- 海外での所得は帰国前後で取り扱いが変わる
- 租税条約の適用を確認する必要がある場合もある
海外所得との関係
帰国後に居住者となった場合:
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帰国前の海外所得
- 原則として日本の所得税の対象外
- ただし、日本源泉所得は課税対象
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帰国後の海外所得
- 居住者として全世界所得が課税対象
- 外国税額控除の適用を検討
必要な手続き
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住民登録
- 帰国後速やかに住民登録を行う
- 住民税の課税関係に影響
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社会保険の加入
- 国民健康保険、国民年金への加入
- 保険料は社会保険料控除の対象
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銀行口座・証券口座の住所変更
- 利子・配当の源泉徴収に影響
- 確定申告での取り扱いが変わる場合がある
年収計算や控除適用の実務ポイント
正確な年収計算の方法
給与を受けていない期間がある場合の年収計算:
基本的な考え方:
- 実際に支払いを受けた給与の合計額
- 支払日基準で計算(未払給与は翌年分)
具体例:
1月~11月の給与:月30万円 × 11か月 = 330万円 12月の給与:0円 年間給与収入:330万円
月割り計算が必要な控除
一部の控除では月割り計算が適用される場合があります:
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配偶者控除・配偶者特別控除
- 12月31日の現況で判定
- 年収要件は年間ベースで計算
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扶養控除
- 年末の現況で判定
- 生計一としての要件を確認
社会保険料の取り扱い
給与天引きされていない期間の社会保険料:
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国民健康保険料
- 実際に支払った額を控除
- 分割払いの場合は支払い済み分のみ
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国民年金保険料
- 年間支払額を控除
- 前納・後納の場合の取り扱いに注意
節税効果のシミュレーション例
年収の壁計算ツールを使って、実際のケースでの節税効果を確認してみましょう。
ケース1:海外帰国者(単身)
基本情報:
- 年齢:35歳
- 年収:330万円(1月~11月分)
- 扶養家族:なし
- 社会保険料:36万円
計算結果:
- 給与所得:330万円 - 108万円(給与所得控除)= 222万円
- 課税所得:222万円 - 48万円(基礎控除)- 36万円(社会保険料控除)= 138万円
- 所得税:138万円 × 5% = 6.9万円
- 住民税:138万円 × 10% + 均等割 = 14.3万円
ケース2:年末退職者(配偶者あり)
基本情報:
- 年齢:40歳
- 年収:400万円(1月~11月分)
- 配偶者:専業主婦(所得なし)
- 社会保険料:40万円
計算結果:
- 給与所得:400万円 - 124万円(給与所得控除)= 276万円
- 課税所得:276万円 - 48万円(基礎控除)- 38万円(配偶者控除)- 40万円(社会保険料控除)= 150万円
- 所得税:150万円 × 5% = 7.5万円
- 住民税:150万円 × 10% + 均等割 = 15.5万円
節税のポイント
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控除の漏れがないかチェック
- 医療費控除、寄附金控除等の適用可能性
- 退職金の分離課税の活用
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翌年の準備
- iDeCo、NISA等の活用計画
- 扶養控除等申告書の適切な提出
実際の計算は年収の壁計算ツールで詳細に確認できます。個別の状況に応じて最適な節税戦略を立てることができるでしょう。
まとめ
令和7年12月1日以後に居住者として給与の支払を受けていない人への税務取り扱いは、一見複雑に見えますが、基本的な仕組みを理解すれば適切に対応できます。
重要なポイントをまとめると:
- 給与を受けていない期間があっても、年間を通じた所得で税額を計算
- 基礎控除をはじめとする各種控除は適切に適用可能
- 源泉徴収票は必ず入手し、ない場合は税務署に相談
- 海外帰国者は居住者認定のタイミングと海外所得の取り扱いに注意
- 確定申告では正確な年収計算と控除適用が節税の鍵
特に海外から帰国された方や、年の途中で転職・退職された方は、個別の事情が複雑になりがちです。不明な点があれば税務署への相談や、税理士への相談も検討されることをお勧めします。
年収の壁計算ツールを活用して、ご自身の状況での税額を事前に把握し、適切な税務手続きを行いましょう。