2025年12月施行前の年末調整書類提出ガイド!特定親族特別控除申告書の手続きも徹底解説
「令和7年分の年末調整書類の提出はいつものやり方でいいの?」このような質問を企業の給与担当者から多く見かけます。
実は、2025年12月1日から大幅な税制改正が施行されるため、令和7年分の年末調整は特別な対応が必要になります。特に「特定親族特別控除申告書」という新しい書類の提出や、扶養控除等申告書の記載方法に変更があり、従来通りの手続きでは適切に処理できません。
多くの企業では年末調整を11月から12月にかけて実施しますが、今年は税制改正の施行日(12月1日)をまたぐ特殊な状況となるため、企業の実務担当者も従業員も混乱しやすい状況です。
この記事では、2025年12月1日の税制改正施行前の年末調整書類提出について、企業の実務担当者と従業員の両方が知っておくべき重要なポイントを詳しく解説します。令和7年分扶養控除等申告書の正しい記載方法から、新設される特定親族特別控除申告書の提出手続きまで、実務で困らないよう具体的に説明していきます。
2025年度年末調整の特殊事情とスケジュール
なぜ2025年度の年末調整は特別なのか
2025年度の年末調整が特殊な理由は、令和7年度税制改正の施行日が12月1日に設定されているためです。通常、税制改正は年の初めから適用されますが、今回の改正は年の途中から適用となります。
この結果、以下のような複雑な状況が生まれています:
- 令和7年1月1日~11月30日:現行制度が適用
- 令和7年12月1日~12月31日:新制度が適用
- 年末調整の実施時期(11月~12月)が改正施行日とタイミングが重複
年末調整の特別対応スケジュール
従来の年末調整スケジュールと比較して、2025年度は以下のような特別対応が必要です:
10月中旬~11月上旬
- 従業員への改正内容の説明・周知
- 新しい書類様式の準備
- システム設定の確認・更新
11月中旬~11月下旬
- 令和7年分扶養控除等申告書の回収
- 特定親族特別控除申告書の回収(該当者のみ)
- 保険料控除申告書等その他書類の回収
12月上旬~12月下旬
- 改正後の基準での年末調整計算
- 源泉徴収票の作成・交付
- 法定調書の作成
年収の壁計算ツールでの事前確認
年末調整の実施前に、[年収の壁計算ツール](https://zeikabe.jp)で改正後の税額を事前に確認しておくことをお勧めします。特に特定親族特別控除の適用がある家庭では、控除額の大きさを事前に把握しておくと、年末調整の結果への理解が深まります。
令和7年分扶養控除等申告書の記載方法と注意点
従来との主な違い
令和7年分の扶養控除等申告書では、源泉控除対象親族という新しい区分が設けられています。これは従来の控除対象扶養親族から拡大された概念で、19歳以上23歳未満の親族も含まれます。
源泉控除対象親族の記載方法
対象となる親族
- 19歳以上23歳未満の親族(合計所得金額58万円以下)
- 従来の控除対象扶養親族(16歳以上の親族)
記載時の注意点
- 年齢の判定は令和7年12月31日現在で行う
- 合計所得金額の基準が48万円から58万円に変更
- 19歳以上23歳未満の親族は「源泉控除対象親族」欄に記載
具体的な記載例
ケース1:20歳の大学生の子がアルバイトで年収110万円の場合
- 給与所得控除55万円を差し引いた合計所得金額:55万円
- 58万円以下なので源泉控除対象親族として記載可能
- 扶養控除等申告書の「源泉控除対象親族」欄に記載
ケース2:21歳の子が年収120万円の場合
- 給与所得控除55万円を差し引いた合計所得金額:65万円
- 58万円を超えるため源泉控除対象親族には該当しない
- 申告書への記載は不要
特定親族特別控除申告書の提出タイミングと要件
特定親族特別控除とは
特定親族特別控除は、令和7年度税制改正で新設された控除制度で、19歳以上23歳未満の子どもがいる世帯を対象とした控除です。最大63万円の所得控除が受けられる重要な制度です。
申告書の提出要件
提出が必要な人
- 19歳以上23歳未満の親族を扶養している人
- その親族の合計所得金額が58万円以下である人
- 年末調整または確定申告で控除を受けたい人
提出タイミング
- 年末調整の場合:11月末までに勤務先へ提出
- 確定申告の場合:翌年3月15日までに税務署へ提出
申告書の記載内容
必要な記載事項
- 申告者の氏名・住所
- 特定親族の氏名・生年月日・続柄
- 特定親族の合計所得金額の見積額
- 同居・別居の別
- 控除額の計算
控除額の計算方法
特定親族特別控除の控除額は、特定親族の合計所得金額に応じて以下のように計算されます:
- 合計所得金額30万円以下:63万円
- 合計所得金額30万円超40万円以下:43万円
- 合計所得金額40万円超50万円以下:26万円
- 合計所得金額50万円超58万円以下:13万円
改正適用前後での書類の違いと対応方法
使用する申告書の様式
令和7年分の年末調整では、以下の申告書を使用します:
必ず提出が必要な書類
- 令和7年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 令和7年分給与所得者の保険料控除申告書
該当者のみ提出する書類
- 令和7年分特定親族特別控除申告書
- 令和7年分給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
記載様式の主な変更点
扶養控除等申告書の変更点
- 「源泉控除対象親族」欄の新設
- 合計所得金額の判定基準が48万円→58万円に変更
- 19歳以上23歳未満の親族の取扱いが変更
新設される申告書
- 特定親族特別控除申告書(完全新規)
- 記載方法や提出要件を十分理解する必要がある
企業の年末調整実務への影響と対策
システム対応の必要性
多くの企業で使用されている給与計算システムや年末調整システムでは、以下の対応が必要です:
システム設定の変更点
- 基礎控除額の段階的適用設定
- 源泉控除対象親族の判定ロジック追加
- 特定親族特別控除の計算機能追加
- 令和8年分源泉徴収税額表の適用
従業員への周知・説明
企業は従業員に対して、以下の内容を適切に説明する必要があります:
周知すべき主要な内容
- 扶養親族の所得要件変更(48万円→58万円)
- 特定親族特別控除の新設
- 申告書の記載方法の変更
- 提出期限と提出方法
実務担当者の準備事項
事前準備のチェックリスト
- 改正内容の正確な理解
- 新しい申告書様式の準備
- システムの設定変更・動作確認
- 従業員向け説明資料の作成
- 質問対応体制の整備
従業員が準備すべき書類と手続き
基本的な提出書類
全従業員が提出する書類
- 令和7年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 令和7年分給与所得者の保険料控除申告書
該当者のみ提出する書類
- 特定親族特別控除申告書(19歳以上23歳未満の扶養親族がいる場合)
- 基礎控除申告書等(年収850万円超または配偶者控除等を受ける場合)
事前に準備しておくべき情報
扶養親族に関する情報
- 扶養親族の正確な生年月日
- 扶養親族の令和7年中の所得見積額
- 同居・別居の状況
- 障害者の該当有無
所得に関する情報
- 令和7年中の給与収入見込額
- その他の所得(副業等)の見込額
- 配偶者の所得状況
注意すべき所得計算
給与所得の計算(令和7年分)
- 給与収入162.5万円以下:収入金額-55万円
- 給与収入162.5万円超180万円以下:収入金額×0.75-27.5万円
- 給与収入180万円超360万円以下:収入金額×0.8-44万円
判定に迷うケース
- アルバイト収入が年途中で変動する場合
- 複数のアルバイトを掛け持ちしている場合
- 給与以外の所得がある場合
よくある間違いと対策方法
扶養控除等申告書での間違い
よくある間違い1:所得要件の誤解
- 誤:年収58万円以下なら扶養親族
- 正:合計所得金額58万円以下(給与収入なら113万円以下)
対策方法 給与収入から給与所得控除55万円を差し引いた金額で判定することを明確に説明する。
よくある間違い2:年齢判定の誤り
- 誤:申告書作成時点の年齢で判定
- 正:令和7年12月31日現在の年齢で判定
対策方法 年末時点での年齢を基準とすることを強調し、生年月日での確認を徹底する。
特定親族特別控除申告書での間違い
よくある間違い3:控除額の計算ミス
- 所得金額に応じた控除額の適用を間違える
- 所得区分の境界値での計算ミス
対策方法 控除額早見表を作成し、具体的な計算例を示して説明する。
よくある間違い4:提出漏れ
- 該当者が申告書の提出を忘れる
- 企業側が対象者を見落とす
対策方法 19歳以上23歳未満の扶養親族がいる従業員をリストアップし、個別に確認を行う。
システム関連のトラブル
よくある問題1:計算結果の不整合
- 手計算とシステム計算の結果が合わない
- 改正前後の基準が混在する
対策方法 計算ロジックを事前に十分検証し、サンプルケースでの動作確認を実施する。
よくある問題2:申告書様式の取り違え
- 旧様式と新様式を間違える
- 令和6年分と令和7年分を取り違える
対策方法 使用する申告書様式を明確に指定し、様式の確認チェックを徹底する。
まとめ
2025年12月1日の税制改正施行前の年末調整は、従来よりも複雑な手続きが必要となります。特に重要なポイントは以下の通りです:
- 源泉控除対象親族の新設により、扶養控除等申告書の記載方法が変更
- 特定親族特別控除申告書という新しい書類の提出が必要(該当者のみ)
- 合計所得金額の判定基準が48万円から58万円に変更
- 企業のシステム対応と従業員への十分な説明が不可欠
企業の実務担当者は、改正内容を正確に理解し、システムの設定変更や従業員への説明を適切に行う必要があります。従業員の皆さんは、扶養親族の所得状況を正確に把握し、必要な申告書を期限内に提出することが重要です。
年末調整の実施前に、[年収の壁計算ツール](https://zeikabe.jp)で税額の事前確認を行い、改正後の制度での影響を把握しておくことをお勧めします。適切な準備と対応により、スムーズな年末調整の実施を実現しましょう。