令和7年12月精算の対象となる公的年金等の範囲を完全解説!あなたの年金は精算対象?
「私の受給している年金は、令和7年12月の精算対象になるのでしょうか?」というご質問を最近よく耳にします。多くの年金受給者の方が、2025年12月に実施される公的年金等の源泉徴収税額精算について、自分の年金が対象となるかどうか不安に感じているようです。
また、企業年金の担当者の方からも「どの年金制度が精算対象で、どの年金制度が除外されるのか詳しく知りたい」というお声をいただいています。確かに、公的年金等の範囲は複雑で、判定に迷うケースも少なくありません。
この記事では、国税庁の「令和7年度税制改正に関するQ&A」に基づいて、令和7年12月に実施される精算の対象となる公的年金等の範囲について、具体的な年金制度ごとに詳しく解説いたします。読み終えた後には、あなたの年金が精算対象かどうか明確に判断できるようになるでしょう。
令和7年12月精算の基本概要
精算制度の背景と目的
令和7年12月に実施される公的年金等の源泉徴収税額精算は、税制改正によって新たに導入される制度です。この制度の目的は、年金受給者の税負担をより正確に計算し、年末調整と同様の精算機能を年金分野にも適用することです。
精算の実施により、以下のような効果が期待されています:
年金受給者のメリット
- 月々の源泉徴収税額の過不足が年内に自動的に精算される
- 確定申告の負担が軽減される
- より正確な税額計算により適正な税負担となる
年金支払者のメリット
- 年末調整と同様の精算業務の効率化
- 税額計算の標準化による事務負担の軽減
精算の実施時期と方法
実施時期: 令和7年12月分の年金支給時 精算方法: 年金支払者が年税額を再計算し、月々に源泉徴収した税額との差額を精算 対象期間: 令和7年1月から12月までに支給された公的年金等
精算対象となる公的年金等の具体的な範囲
対象となる年金制度の基本的な考え方
精算対象となる公的年金等の範囲は、所得税法上の「公的年金等」に該当するもののうち、特定の要件を満たすものに限定されています。
基本的な判定基準
- 所得税法第35条第1項に規定する「公的年金等」に該当すること
- 源泉徴収義務者による継続的な支給であること
- 年金受給者の扶養控除等申告書の提出があること
- 年間支給額が一定額以上であること
国民年金制度における取り扱い
対象となるもの
- 老齢基礎年金(国民年金)
- 障害基礎年金(所得税の課税対象となる部分)
- 遺族基礎年金(所得税の課税対象となる部分)
除外されるもの
- 障害基礎年金(非課税部分)
- 遺族基礎年金(非課税部分)
- 脱退一時金
- 死亡一時金
国民年金における重要なポイントは、障害基礎年金と遺族基礎年金については、原則として非課税ですが、一部課税対象となる場合があることです。具体的には、他の所得との合計額によって課税対象となる部分について精算が行われます。
厚生年金制度における取り扱い
対象となるもの
- 老齢厚生年金
- 特別支給の老齢厚生年金
- 障害厚生年金(課税対象部分)
- 遺族厚生年金(課税対象部分)
除外されるもの
- 障害手当金
- 厚生年金基金からの年金(企業年金として別途判定)
厚生年金制度では、基本的に老齢に関する年金給付が精算の主要な対象となります。障害厚生年金や遺族厚生年金についても、課税対象となる部分については精算が実施されます。
共済年金制度における取り扱い
対象となるもの
- 国家公務員共済組合からの退職年金
- 地方公務員共済組合からの退職年金
- 私立学校教職員共済制度からの退職年金
- 国会議員互助年金
除外されるもの
- 恩給(国が直接支給するもの)
- 共済組合の一時金給付
- 職域加算部分(廃止前の制度に限定的に適用)
共済年金制度については、基本的に退職年金が精算対象となります。ただし、恩給については「公的年金等」ではなく「雑所得」として取り扱われるため、精算対象から除外されます。
企業年金・職域年金の詳細な取り扱い
確定給付企業年金
対象となるもの
- 確定給付企業年金法に基づく企業年金
- 適格退職年金からの移行年金
- 中小企業退職金共済制度からの年金
除外されるもの
- 一時金での受給
- 企業独自の退職金制度(年金形式であっても公的年金等に該当しないもの)
確定給付企業年金については、法律に基づく正式な企業年金制度からの年金給付が精算対象となります。企業が独自に設けた退職金制度については、年金形式での支給であっても「公的年金等」に該当しないため除外されます。
確定拠出年金
対象となるもの
- 企業型確定拠出年金からの年金給付
- 個人型確定拠出年金(iDeCo)からの年金給付
除外されるもの
- 一時金での受給
- 脱退一時金
確定拠出年金については、年金形式での受給が精算対象となります。一時金での受給については「退職所得」として取り扱われるため、精算対象から除外されます。
厚生年金基金
対象となるもの
- 代行部分(厚生年金相当額)
- 加算部分(上乗せ給付)
除外されるもの
- 解散時の一時金給付
- 中途脱退時の給付
厚生年金基金については、代行部分と加算部分の両方が精算対象となります。ただし、基金の解散に伴う一時金については除外されます。
外国の年金制度との関係
社会保障協定に基づく年金
対象となるもの
- 日本の社会保障協定締結国からの年金のうち、日本で課税対象となるもの
- 外国政府または外国の地方公共団体から支給される年金のうち公的年金等に該当するもの
除外されるもの
- 租税条約により日本での課税が免除されるもの
- 私的年金制度からの年金
外国の年金制度については、社会保障協定や租税条約の規定により複雑な判定が必要となります。一般的には、外国の公的年金制度からの年金で日本において課税対象となるものが精算対象となります。
判定が複雑なケース
在日外国人の場合
- 母国の年金制度からの年金受給
- 日本の年金制度との併給調整
- 居住者・非居住者の判定
海外居住者の場合
- 日本の年金制度からの年金受給
- 現地国での課税関係
- 源泉徴収の適用関係
これらのケースについては、個別の事情により判定が異なるため、税務署や年金事務所への相談が推奨されます。
判定が困難なケースの具体的対応
グレーゾーンとなりやすい年金制度
準公的な年金制度
- 小規模企業共済
- 中小企業退職金共済
- 建設業退職金共済
- 清酒製造業退職金共済
これらの制度については、「公的年金等」に該当するかどうかの判定が必要です。
判定のポイント
- 法律に基づく制度か
- 国や地方公共団体の関与があるか
- 税法上の取り扱いはどうなっているか
企業年金の複雑なケース
合併・分割時の年金
- 企業の合併により年金制度が統合された場合
- 会社分割により年金制度が分離された場合
- 年金制度の移管が行われた場合
制度変更時の年金
- 確定給付から確定拠出への移行
- 適格退職年金から確定給付企業年金への移行
- 厚生年金基金の解散に伴う移行
これらのケースでは、移行前後の制度の性格や法的根拠を検討して判定する必要があります。
実務上の判定手順
ステップ1: 基本的な制度確認
- 年金の支給主体は誰か
- 根拠となる法律は何か
- 税法上の取り扱いはどうか
ステップ2: 具体的な給付内容の確認
- 年金か一時金か
- 課税対象か非課税か
- 源泉徴収の対象か
ステップ3: 特殊事情の検討
- 外国との関係はあるか
- 制度変更の履歴はあるか
- 特別な法的取り扱いはあるか
年金受給者が確認すべきポイント
受給している年金の確認方法
年金証書・年金支払通知書の確認
- 年金の種類(老齢・障害・遺族)
- 支給機関名
- 年金コード
- 課税・非課税の区分
年金証書には、その年金が精算対象となるかどうかを判定するための重要な情報が記載されています。特に「年金コード」は制度を特定する上で重要な手がかりとなります。
確認すべき具体的項目
- 支給機関: 日本年金機構、共済組合、企業年金連合会等
- 年金の種類: 基礎年金、厚生年金、共済年金、企業年金等
- 給付事由: 老齢、障害、遺族
- 税法上の取り扱い: 課税・非課税の区分
扶養控除等申告書の提出状況
精算を受けるためには、年金支払者に対して「公的年金等の受給者の扶養控除等申告書」を提出している必要があります。
提出が必要な場合
- 65歳未満で年金年額108万円以上
- 65歳以上で年金年額158万円以上
提出していない場合の取り扱い
- 精算は実施されない
- 確定申告での調整が必要
- 源泉徴収税率は一律の税率が適用
複数の年金を受給している場合の注意点
それぞれの年金ごとに判定 複数の年金制度から年金を受給している場合、それぞれの年金ごとに精算対象かどうかを判定する必要があります。
精算対象の組み合わせ例
- 国民年金(老齢基礎年金): 対象
- 厚生年金(老齢厚生年金): 対象
- 企業年金(確定給付企業年金): 対象
- 個人年金保険: 対象外
注意すべきポイント
- 年金ごとに支払者が異なる場合の調整方法
- 扶養控除等申告書の提出先
- 精算のタイミングの違い
企業年金担当者の実務対応
精算業務の準備事項
システム対応
- 年税額計算システムの構築
- 扶養控除等申告書の管理システム
- 精算額計算プログラムの開発
データ整備
- 受給者の基本情報整備
- 年間支給実績の集計
- 扶養親族等の情報管理
受給者への周知・説明
周知すべき内容
- 精算制度の概要
- 精算対象となる年金の範囲
- 扶養控除等申告書の提出の重要性
- 精算のスケジュール
説明資料の作成ポイント
- 専門用語を避けた分かりやすい表現
- 具体例を用いた説明
- よくある質問とその回答
- 問い合わせ先の明記
税務署等との連携
事前相談事項
- 自社の年金制度が精算対象となるかの確認
- 精算業務の具体的な手順
- システム対応の要件
継続的な情報収集
- 国税庁からの通達・通知
- 年金局からの指導
- 業界団体からの情報
精算時期と手続きの流れ
令和7年12月精算のスケジュール
9月~10月: 準備期間
- 年間支給実績の集計
- 扶養控除等申告書の内容確認
- 年税額の仮計算
11月: 最終確認期間
- 受給者情報の最終確認
- 精算額の計算
- システムテスト
12月: 精算実施
- 精算税額の計算確定
- 12月分年金での精算実施
- 精算結果の通知
精算額の計算方法
基本的な計算式 精算税額 = 年税額 - 1月~11月源泉徴収税額
年税額の計算要素
- 年間の公的年金等収入金額
- 公的年金等控除額
- 基礎控除、扶養控除等の各種所得控除
- 所得税率
注意すべき計算上のポイント
- 月割計算での端数処理
- 複数年金の合算計算
- 年の中途での年金開始・終了の取り扱い
よくある質問と実務上の留意点
受給者からの典型的な質問
Q1: 障害年金は精算対象になりますか? A: 障害基礎年金・障害厚生年金は原則として非課税ですが、他の所得との関係で課税対象となる部分については精算対象となります。
Q2: 企業年金と厚生年金を両方受給していますが、どちらも精算されますか? A: それぞれの年金制度ごとに精算が実施されます。ただし、扶養控除等申告書は主たる年金支払者に提出することになります。
Q3: 外国の年金も精算対象になりますか? A: 外国の公的年金で日本において課税対象となるものは精算対象となりますが、租税条約等により取り扱いが異なる場合があります。
実務上の注意点
データ管理
- 受給者の住所変更等の情報更新
- 扶養親族の異動情報の適時反映
- システム障害時のバックアップ体制
精算額の過不足
- 還付となる場合の支払方法
- 追加徴収となる場合の回収方法
- 精算できない場合の対応
年末年始の業務体制
- 12月精算業務の体制確保
- 受給者からの問い合わせ対応
- システム保守・運用体制
まとめ
令和7年12月に実施される公的年金等の源泉徴収税額精算について、対象となる年金の範囲を詳しく解説してまいりました。
重要なポイントの整理
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基本的な対象範囲: 所得税法上の「公的年金等」のうち、継続的に支給され扶養控除等申告書の提出があるものが対象
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主な対象年金:
- 国民年金(老齢基礎年金)
- 厚生年金(老齢厚生年金)
- 共済年金(退職年金)
- 確定給付企業年金
- 確定拠出年金(年金受給)
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除外される主なもの:
- 一時金での受給
- 非課税の障害・遺族年金
- 私的年金保険
- 企業独自の退職金制度
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年金受給者の確認事項:
- 受給年金の制度確認
- 扶養控除等申告書の提出状況
- 複数年金受給時の調整方法
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企業年金担当者の対応:
- システム・データ整備
- 受給者への適切な周知
- 税務署等との事前連携
この精算制度により、年金受給者の皆様の税負担がより適正に計算され、確定申告の負担軽減にもつながることが期待されます。ご自身の年金が精算対象となるかご不明な場合は、年金支払者や最寄りの税務署にお問い合わせください。
2025年12月の精算に向けて、受給者・支払者双方が適切な準備を進めることで、スムーズな制度運用が実現されることを期待しています。