勤労学生控除とは?2025年度改正で所得要件が変更!アルバイト学生必見の節税制度
「アルバイトを頑張って稼いだけど、税金で引かれる金額が思っていたより多くて困っている」このような悩みを抱える学生の方は多いのではないでしょうか。また、「親の扶養から外れるかもしれないけど、何か節税方法はないの?」という質問もよく見かけます。
実は、学生の皆さんが活用できる重要な制度があります。それが勤労学生控除です。この制度を正しく理解して活用することで、アルバイト収入があっても税負担を軽減できる可能性があります。
さらに、2025年12月1日以降、勤労学生控除の所得要件に重要な変更が加わります。この改正により、これまで控除を受けられなかった学生も対象となる可能性が広がりました。
この記事では、勤労学生控除の基本的な仕組みから2025年度の改正内容、具体的な年収別シミュレーション、申告手続きの方法まで、学生の皆さんが知っておくべき情報を分かりやすく解説します。実際に計算してみることで、ご自身にとってのメリットを確認してみましょう。
勤労学生控除の基本要件と控除額
勤労学生控除は、学校に通いながらアルバイトなどで働いている学生が利用できる所得控除の一つです。この制度を活用することで、所得税や住民税の負担を軽減することができます。
勤労学生控除の控除額
勤労学生控除が適用されると、以下の金額を所得から差し引くことができます。
- 所得税: 27万円
- 住民税: 26万円
この控除により、年収130万円程度のアルバイト学生であれば、年間で約2万円程度の税負担軽減効果が期待できます。
従来の適用要件(2025年11月まで)
2025年11月までの勤労学生控除の適用要件は以下のとおりです。
- 学生であること(後述する対象学校に在籍)
- 勤労による所得があること(アルバイト・パート等の給与所得)
- 合計所得金額が75万円以下であること
- 勤労によらない所得が10万円以下であること(利子・配当・雑所得等)
特に重要なのが「合計所得金額が75万円以下」という要件です。給与収入に換算すると約130万円となるため、多くの学生がこの要件を満たしていました。
2025年12月以降の改正内容
2025年12月1日以降、勤労学生控除の所得要件が大幅に引き上げられることになりました。この改正により、より多くの学生が勤労学生控除の恩恵を受けられるようになります。
改正後の適用要件
合計所得金額の上限引き上げ
- 改正前: 75万円以下
- 改正後: 123万円以下(48万円の大幅引き上げ)
この改正により、給与収入で考えると約178万円まで勤労学生控除の対象となります。
勤労によらない所得の要件変更
- 改正前: 10万円以下
- 改正後: 10万円以下(変更なし)
利子・配当・雑所得などの勤労によらない所得については、引き続き10万円以下という要件が維持されます。
改正の背景と意義
この改正は、基礎控除の引き上げ(38万円→48万円)に合わせて行われるものです。近年の学費上昇や生活費の増加により、学生のアルバイト収入も増加傾向にあることを踏まえ、より実態に即した制度となりました。
勤労学生控除の適用条件
勤労学生控除を受けるためには、所得要件以外にも満たすべき条件があります。ここでは、詳細な適用条件について解説します。
対象となる学校の種類
勤労学生控除の対象となる学校は、以下のように定められています。
学校教育法に規定する学校
- 小学校、中学校、高等学校
- 大学(大学院を含む)
- 高等専門学校
- 特別支援学校
専修学校・各種学校
- 専修学校(専門学校)
- 各種学校のうち修業年限が1年以上のもの
職業能力開発促進法に規定する施設
- 職業能力開発総合大学校
- 職業能力開発大学校
- 職業能力開発短期大学校
- 職業能力開発校
勤労による所得の範囲
勤労学生控除における「勤労による所得」とは、主に以下のような所得を指します。
給与所得
- アルバイト・パートの給与
- 正社員としての給与
- 日雇い労働による収入
事業所得
- 個人事業として行う仕事による収入
- フリーランスとしての収入
- 家庭教師などの個人的な業務
勤労によらない所得の例
以下のような所得は「勤労によらない所得」として扱われ、10万円以下であることが要件となります。
- 預金利息、株式配当
- 不動産所得
- 退職所得
- 一時所得(懸賞金など)
- 雑所得(年金、副業収入など)
扶養控除との関係性
勤労学生控除と扶養控除の関係は、多くの学生とその親御さんが気になるポイントです。ここでは、両制度の関係について詳しく解説します。
扶養控除の基本要件
親の扶養控除を受けるための要件は以下のとおりです。
- 年齢: 16歳以上
- 合計所得金額: 48万円以下(給与収入で103万円以下)
- 親族関係: 生計を一にする親族
勤労学生控除と扶養控除の併用
年収103万円以下の場合
年収103万円以下であれば、以下の状況となります。
- 学生本人: 基礎控除(48万円)により所得税・住民税ともに0円
- 親: 扶養控除(38万円)を受けられる
- 勤労学生控除: 適用の必要なし(既に税額が0円のため)
年収103万円超130万円以下の場合
年収が103万円を超えると、以下の状況となります。
- 学生本人: 勤労学生控除(27万円)により所得税・住民税を軽減
- 親: 扶養控除は受けられない
- 社会保険: 学生本人は引き続き親の扶養に入れる(年収130万円未満の場合)
2025年12月以降の年収130万円超178万円以下の場合
改正後は、より高い年収でも勤労学生控除を受けられます。
- 学生本人: 勤労学生控除により税負担を軽減
- 親: 扶養控除は受けられない
- 社会保険: 年収130万円を超えると親の扶養から外れ、自分で加入が必要
家計全体での最適化
家計全体で考えた場合の最適解は、家族の収入状況によって異なります。
親の所得税率が高い場合
親の所得税率が高い(20%以上)場合、扶養控除のメリットが大きくなります。この場合、学生の年収を103万円以下に抑える方が家計全体の税負担は軽くなる可能性があります。
親の所得税率が低い場合
親の所得税率が5%~10%程度の場合、学生が勤労学生控除を活用して働く方が、家計全体の手取り収入が増える可能性があります。
年収別の具体的なメリット・シミュレーション
実際の年収別に、勤労学生控除を活用した場合の税負担軽減効果を具体的にシミュレーションしてみましょう。
年収120万円の学生Aさんの場合
勤労学生控除を適用しない場合
- 給与収入: 120万円
- 給与所得控除: 55万円
- 給与所得: 65万円
- 基礎控除: 48万円
- 課税所得: 17万円
- 所得税: 8,500円
- 住民税: 16,000円
- 合計税額: 24,500円
勤労学生控除を適用した場合
- 給与収入: 120万円
- 給与所得控除: 55万円
- 給与所得: 65万円
- 基礎控除: 48万円
- 勤労学生控除: 27万円
- 課税所得: 0円(マイナスのため0円)
- 所得税: 0円
- 住民税: 0円
- 合計税額: 0円
節税効果: 24,500円
年収150万円の学生Bさんの場合(2025年12月以降)
勤労学生控除を適用しない場合
- 給与収入: 150万円
- 給与所得控除: 55万円
- 給与所得: 95万円
- 基礎控除: 48万円
- 課税所得: 47万円
- 所得税: 23,500円
- 住民税: 46,000円
- 合計税額: 69,500円
勤労学生控除を適用した場合
- 給与収入: 150万円
- 給与所得控除: 55万円
- 給与所得: 95万円
- 基礎控除: 48万円
- 勤労学生控除: 27万円
- 課税所得: 20万円
- 所得税: 10,000円
- 住民税: 19,000円
- 合計税額: 29,000円
節税効果: 40,500円
年収178万円の学生Cさんの場合(2025年12月以降)
勤労学生控除を適用しない場合
- 給与収入: 178万円
- 給与所得控除: 55万円
- 給与所得: 123万円
- 基礎控除: 48万円
- 課税所得: 75万円
- 所得税: 37,500円
- 住民税: 74,000円
- 合計税額: 111,500円
勤労学生控除を適用した場合
- 給与収入: 178万円
- 給与所得控除: 55万円
- 給与所得: 123万円
- 基礎控除: 48万円
- 勤労学生控除: 27万円
- 課税所得: 48万円
- 所得税: 24,000円
- 住民税: 47,000円
- 合計税額: 71,000円
節税効果: 40,500円
これらのシミュレーションからも分かるように、勤労学生控除の活用により年間数万円の節税効果が期待できます。実際に計算してみたい方は、年収の壁計算ツールをご活用ください。
申告手続きの方法と注意点
勤労学生控除を受けるためには、適切な申告手続きが必要です。ここでは、具体的な手続き方法と注意すべきポイントについて解説します。
年末調整での申告
勤務先が1箇所の場合
アルバイト先が1箇所のみで、年末調整を行ってくれる場合は、以下の手続きを行います。
扶養控除等申告書への記載
年末調整時に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の「勤労学生」欄にチェックを入れ、学校名を記載します。
在学証明書の提出
勤務先から求められた場合は、学校発行の在学証明書を提出します。ただし、多くの場合は口頭での確認のみで済むことが多いです。
確定申告での申告
確定申告が必要な場合
以下のような場合は、確定申告が必要となります。
- アルバイト先が複数ある場合
- アルバイト先で年末調整が行われない場合
- 給与以外の所得がある場合
- 源泉徴収税額の還付を受けたい場合
確定申告書の記載方法
確定申告書第一表の「所得から差し引かれる金額」欄の「勤労学生」の箇所に27万円を記載します。
必要書類
- 源泉徴収票(全てのアルバイト先分)
- 在学証明書(税務署から求められた場合)
- 給与以外の所得がある場合は関連書類
住民税の申告
所得税の確定申告を行った場合、通常は住民税の申告は不要です。ただし、以下の場合は市区町村への申告が必要となることがあります。
- 所得税の確定申告を行わない場合
- 住民税のみの減額を受けたい場合
申告時の注意点
申告期限の遵守
- 確定申告期限: 翌年3月15日まで
- 住民税申告期限: 翌年3月15日まで(市区町村により異なる場合あり)
記録の保管
申告に関する書類は、7年間保管することが義務付けられています。特に以下の書類は大切に保管しましょう。
- 源泉徴収票
- 在学証明書
- 確定申告書の控え
他の控除との重複チェック
勤労学生控除は他の所得控除と併用できますが、適用要件を満たしているかを事前に確認することが重要です。
アルバイト学生が知っておくべきポイント
勤労学生控除を効果的に活用するために、学生の皆さんが知っておくべき重要なポイントをまとめました。
年収の計画的な管理
103万円の壁との使い分け
年収103万円を超える場合は、以下の点を考慮して判断しましょう。
- 親の扶養控除(38万円)と学生自身の勤労学生控除(27万円)のバランス
- 親の所得税率による影響
- 社会保険の扶養要件(年収130万円)
130万円の壁への対応
年収130万円を超えると、社会保険の扶養から外れる可能性があります。この場合の負担増加も考慮に入れて年収を調整することが重要です。
複数アルバイトでの注意点
源泉徴収の仕組み
複数のアルバイト先で働く場合、それぞれで源泉徴収が行われるため、年末調整や確定申告により正確な税額を計算する必要があります。
扶養控除等申告書の提出
扶養控除等申告書は、メインとなる1箇所のアルバイト先にのみ提出します。他のアルバイト先には提出しないよう注意しましょう。
学費等との兼ね合い
教育ローンの活用
年収が増加することで、親の教育ローン等の条件に影響を与える可能性があります。事前に金融機関に確認することをお勧めします。
奨学金への影響
一部の奨学金では、学生本人の収入に制限がある場合があります。奨学金の継続条件を事前に確認しておきましょう。
将来のキャリアを見据えた戦略
社会保険の加入経験
年収130万円を超えて社会保険に加入することで、将来の年金受給額が増加するメリットもあります。長期的な視点での判断も重要です。
税務申告の経験
確定申告を自分で行うことで、税務に関する知識と経験を積むことができます。社会人になってからも役立つスキルとなります。
家族との連携
情報共有の重要性
勤労学生控除の適用により親の扶養控除が受けられなくなるため、事前に家族と相談し、家計全体での最適化を図ることが大切です。
税理士等への相談
複雑なケースの場合は、税理士や税務署の無料相談を活用することで、適切な判断ができます。
まとめ
勤労学生控除は、学業と仕事を両立する学生の皆さんにとって重要な節税制度です。2025年12月1日以降の改正により、合計所得金額の上限が75万円から123万円に引き上げられ、より多くの学生が恩恵を受けられるようになりました。
主要なポイント
- 勤労学生控除の控除額: 所得税27万円、住民税26万円
- 2025年12月以降の改正: 所得要件が48万円引き上げ(給与収入換算で約178万円まで対象)
- 扶養控除との関係: 年収103万円超で親の扶養から外れるが、学生本人は勤労学生控除を活用可能
- 申告手続き: 年末調整または確定申告で申告が必要
- 計画的な年収管理: 家計全体での最適化を考慮した年収調整が重要
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勤労学生控除を活用して、充実した学生生活と将来への投資を両立させましょう。