保険料控除申告書の記載方法完全ガイド!2025年改正で年末調整の書き方はどう変わる?
このような話しを聞いたことはありませんか?「年末調整の保険料控除申告書の書き方がよく分からない」「保険料控除証明書があるのに、どこに何を書けばいいのか迷ってしまう」「2025年の改正で書き方が変わったって聞いたけど、実際どうなの?」
多くの方がこのような悩みをお持ちかと思います。年末調整の保険料控除申告書は、正しく記載すれば税金の負担を大幅に軽減できる重要な書類です。しかし、新制度・旧制度の違いや、複数の保険に加入している場合の記載方法など、複雑な部分も多く、間違いやすいのが現実です。
この記事では、2025年12月の税制改正に対応した保険料控除申告書の記載方法を、初心者の方にも分かりやすく解説します。生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除の具体的な記載手順から、よくあるミスとその対策まで、年末調整で確実に控除を受けるための完全ガイドをお届けします。
2025年の保険料控除申告書の変更点
2025年12月1日の税制改正により、保険料控除申告書自体に大幅な変更はありませんが、基礎控除や扶養控除の見直しに伴い、保険料控除の重要性がより高まっています。
主な変更点
基礎控除の段階的引き上げの影響 基礎控除が所得に応じて最大95万円まで段階的に引き上げられることで、中・高所得者にとって保険料控除の節税効果がより重要になります。
電子申告の推進 2025年からは電子申告がより推進され、保険料控除証明書の電子データでの提出も一般的になります。ただし、紙ベースの申告書記載方法は従来と変わりありません。
記載方法の標準化 企業の年末調整業務効率化のため、記載方法のガイドラインがより明確化されました。
生命保険料控除の記載方法
生命保険料控除は、年末調整で最も多くの方が利用する控除の一つです。新制度・旧制度の違いを理解して正確に記載することが重要です。
新制度と旧制度の見分け方
新制度(平成24年1月1日以降契約)
- 一般生命保険料控除:最大4万円
- 介護医療保険料控除:最大4万円
- 個人年金保険料控除:最大4万円
- 合計限度額:12万円
旧制度(平成23年12月31日以前契約)
- 一般生命保険料控除:最大5万円
- 個人年金保険料控除:最大5万円
- 合計限度額:10万円
具体的な記載手順
STEP1:保険料控除証明書の確認 保険会社から送付される証明書で以下を確認します:
- 契約者氏名
- 保険の種類(一般・介護医療・個人年金)
- 新制度・旧制度の別
- 支払保険料等の金額
STEP2:申告書への記載 年収400万円のAさんが以下の保険に加入している場合の記載例:
- 一般生命保険(新制度):年額8万円
- 介護医療保険(新制度):年額6万円
- 個人年金保険(旧制度):年額12万円
一般生命保険料(新制度)の欄
- 保険会社等の名称:○○生命保険株式会社
- 保険等の種類:終身保険
- 保険期間・年金支払期間:終身
- 契約者の氏名:本人
- 保険金等の受取人:本人
- 新・旧の区分:新
- あなたが本年中に支払った保険料等の金額:80,000円
- 左の金額のうち、あなたが負担すべき金額:80,000円
控除額計算:80,000円 × 1/4 + 20,000円 = 40,000円(上限4万円)
介護医療保険料の欄
- 支払保険料:60,000円
- 控除額:60,000円 × 1/4 + 20,000円 = 35,000円
個人年金保険料(旧制度)の欄
- 支払保険料:120,000円
- 控除額:50,000円(上限)
生命保険料控除額合計 40,000円 + 35,000円 + 50,000円 = 125,000円 ただし、新旧合計の上限12万円のため、控除額は120,000円
記載時の注意点
契約者と支払者の一致 控除を受けられるのは、実際に保険料を支払った人のみです。夫名義の保険でも妻が支払っている場合は、妻が控除を受けることになります。
受取人の要件 保険金の受取人が本人または配偶者、その他の親族でないと控除対象になりません。
分割払いの場合 月払い・半年払いなど分割で支払っている場合は、1年間の合計額を記載します。
地震保険料控除の記載方法
地震保険料控除は、地震保険料と旧長期損害保険料が対象となり、比較的記載が簡単な控除です。
控除額の計算
地震保険料
- 支払保険料の全額(上限5万円)
旧長期損害保険料(平成18年12月31日以前契約)
- 支払保険料が1万円以下:支払保険料の全額
- 支払保険料が1万円超2万円以下:支払保険料 × 1/2 + 5,000円
- 支払保険料が2万円超:15,000円(上限)
記載例
年収350万円のBさんが地震保険料3万円を支払った場合:
地震保険料の欄
- 保険会社等の名称:△△損害保険株式会社
- 保険等の種類:地震保険
- 保険期間:1年
- 契約者の氏名:本人
- 保険の対象となった家屋等に住む人:本人
- あなたが本年中に支払った保険料の金額:30,000円
地震保険料控除額:30,000円(支払保険料の全額)
注意すべきポイント
住宅の用途確認 店舗兼住宅の場合、居住用部分の面積割合に応じて按分計算が必要です。
共有名義の場合 建物を夫婦で共有している場合でも、実際に保険料を支払った人が控除を受けます。
社会保険料控除の記載方法
社会保険料控除は、給与から天引きされている社会保険料以外に、個人で支払った国民年金保険料や国民健康保険料などが対象です。
対象となる社会保険料
主な対象保険料
- 国民年金保険料(本人・親族分)
- 国民健康保険料
- 介護保険料
- 後期高齢者医療保険料
- 雇用保険料(個人負担分)
記載方法
国民年金保険料の場合 年収300万円のCさんが、大学生の子どもの国民年金保険料年額20万円を支払った場合:
社会保険料控除の欄
- 社会保険の種類:国民年金
- 保険料を負担することになっている人:子(長男)
- あなたが本年中に支払った保険料の金額:200,000円
控除額:200,000円(支払保険料の全額)
必要な添付書類
国民年金保険料 日本年金機構から送付される「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」の添付が必要です。
その他の保険料 市区町村が発行する納付済額の証明書や、実際に支払ったことが分かる領収書の添付が必要です。
小規模企業共済等掛金控除の記載方法
小規模企業共済等掛金控除は、自営業者や会社員の老後資金準備に活用される控除です。
対象となる掛金
主な対象掛金
- 小規模企業共済の掛金
- 企業型確定拠出年金の掛金(個人拠出分)
- 個人型確定拠出年金(iDeCo)の掛金
- 心身障害者扶養共済の掛金
記載例
会社員のDさんがiDeCoで月額2万円の掛金を拠出している場合:
小規模企業共済等掛金控除の欄
- 掛金の種類:個人型確定拠出年金
- 支払先の名称:○○信託銀行
- あなたが本年中に支払った掛金の額:240,000円
控除額:240,000円(支払掛金の全額)
注意点
給与天引きの場合 企業型確定拠出年金で給与天引きされている掛金は、既に年末調整で控除されているため、重複して申告しないよう注意が必要です。
年末調整での提出タイミング
保険料控除申告書の提出には適切なタイミングがあります。
提出期限
一般的な提出期限 多くの企業では11月中旬から12月上旬に設定されています。具体的な期限は勤務先に確認しましょう。
必要書類の準備 10月頃から保険会社などから控除証明書が送付されるため、早めに準備を始めることが大切です。
遅れた場合の対応
年末調整に間に合わなかった場合 翌年の確定申告で控除を受けることができます。確定申告期限は翌年3月15日です。
訂正が必要な場合 年末調整後に間違いに気付いた場合も、確定申告での訂正が可能です。
企業担当者の確認ポイント
企業の給与担当者が年末調整で確認すべき重要なポイントをまとめます。
書類の確認事項
基本的な確認項目
- 氏名・住所の記載漏れはないか
- 控除証明書の添付があるか
- 記載金額と証明書の金額が一致しているか
- 計算間違いはないか
よくある間違いのチェック
- 新制度・旧制度の区分が正しいか
- 契約者と申告者が一致しているか
- 受取人の要件を満たしているか
システム入力時の注意点
金額の入力 申告書の記載金額をそのまま入力するのではなく、控除額の計算が正しいかシステムで再確認します。
証明書との照合 システム入力後も、原本の証明書と突合して間違いがないか確認することが重要です。
よくある記載ミスと対応方法
年末調整でよく見られる記載ミスとその対応方法を解説します。
生命保険料控除のミス
ミス例1:新旧制度の混同 新制度の保険を旧制度欄に記載してしまうケースがあります。
対応方法 保険料控除証明書の「新制度」「旧制度」表示を必ず確認し、該当する欄に記載します。
ミス例2:控除額の計算間違い 支払保険料をそのまま控除額として記載してしまうケースがあります。
対応方法 各制度の控除額計算式を正しく適用し、上限額も考慮して計算します。
地震保険料控除のミス
ミス例:旧長期損害保険料の計算間違い 旧長期損害保険料の控除額計算を間違えるケースがあります。
対応方法 支払保険料に応じた正しい計算式を適用します:
- 1万円以下:全額
- 1万円超2万円以下:支払額×1/2+5,000円
- 2万円超:15,000円(上限)
社会保険料控除のミス
ミス例:証明書の添付忘れ 国民年金保険料の控除証明書を添付し忘れるケースがあります。
対応方法 国民年金保険料については、必ず日本年金機構発行の証明書を添付します。
具体的な計算例とシミュレーション
実際の世帯をモデルにした計算例で、保険料控除の効果を確認してみましょう。
モデルケース1:会社員夫婦(年収500万円・年収100万円)
夫(会社員・年収500万円)の保険料控除
- 生命保険料(新制度):年額10万円 → 控除額4万円
- 地震保険料:年額3万円 → 控除額3万円
- iDeCo掛金:年額24万円 → 控除額24万円
合計控除額:71万円
税額軽減効果
- 所得税(税率10%):71,000円の軽減
- 住民税(税率10%):71,000円の軽減
- 年間軽減額:142,000円
モデルケース2:自営業者(年収400万円)
自営業者の保険料控除
- 生命保険料(新制度):年額8万円 → 控除額4万円
- 国民年金保険料(本人・配偶者分):年額40万円 → 控除額40万円
- 小規模企業共済掛金:年額36万円 → 控除額36万円
合計控除額:80万円
税額軽減効果
- 所得税(税率10%):80,000円の軽減
- 住民税(税率10%):80,000円の軽減
- 年間軽減額:160,000円
年収の壁計算ツールを使って、あなたの具体的な年収と保険料支払額での税額軽減効果を確認してみましょう。
まとめ
保険料控除申告書の正しい記載は、年間数万円から十数万円の税負担軽減につながる重要な手続きです。
記載のポイント
- 保険料控除証明書の内容を正確に転記する
- 新制度・旧制度の区分を間違えない
- 控除額の計算式を正しく適用する
- 必要な添付書類を忘れずに提出する
- 記載後は計算間違いがないか再確認する
2025年度の変更点 基礎控除の見直しにより、保険料控除の節税効果がより重要になります。特に中・高所得者の方は、生命保険料控除、地震保険料控除、小規模企業共済等掛金控除を最大限活用することで、大幅な税負担軽減が期待できます。
年末調整の保険料控除申告書は複雑に見えますが、一つずつ確実に記載すれば必ず正しく処理できます。不明な点があれば早めに勤務先の担当者や税務署に相談し、確実に控除を受けられるよう準備しましょう。