ひとり親控除35万円の最新ガイド!2025年12月改正で変わる所得要件とは?
このような質問をよく見かけます。「シングルマザーになったけど、税金の控除って何が使えるの?」「ひとり親控除と寡婦控除って何が違うの?」「2025年の改正で何が変わったの?」
多くのひとり親世帯の方がこのような疑問をお持ちかと思います。子育てと仕事で忙しい中、税制の詳細を調べる時間もなかなか取れないのが現実ですよね。
ひとり親控除は、シングルマザー・シングルファザーにとって重要な税制優遇制度です。控除額は35万円と大きく、年間の税負担を大幅に軽減できる可能性があります。しかし、2025年12月1日以降は所得要件が一部変更されるため、最新の情報を正しく理解しておくことが重要です。
この記事では、ひとり親控除の基本的な仕組みから2025年改正の詳細、さらには寡婦控除との使い分け、年収別の具体的な節税効果まで、ひとり親世帯の皆さんが知っておくべき情報を分かりやすく解説いたします。年末調整や確定申告での手続き方法も含めて、実際の手続きですぐに役立つ内容をお届けします。
ひとり親控除の基本的な仕組み
ひとり親控除とは
ひとり親控除は、2020年分の所得税から新設された所得控除制度です。婚姻歴の有無にかかわらず、一定の要件を満たすひとり親に対して適用される控除で、所得税・住民税の計算において所得から35万円を差し引くことができます。
この制度は、従来の寡婦控除制度では婚姻歴のない単身女性が対象外となっていた不公平を解消するために創設されました。現在では、性別や婚姻歴を問わず、子育てをするひとり親世帯を幅広く支援する制度として機能しています。
控除額と税負担軽減効果
ひとり親控除の控除額は、所得税・住民税ともに35万円です。この控除により実際にどの程度税負担が軽減されるかは、適用される税率によって決まります。
年収300万円のシングルマザーBさんの場合
年収300万円(給与所得控除後の所得約202万円)のBさんがひとり親控除を適用した場合の節税効果を見てみましょう。
- 所得税の軽減額:35万円 × 5%(所得税率)= 17,500円
- 住民税の軽減額:35万円 × 10%(住民税率)= 35,000円
- 年間の節税効果:17,500円 + 35,000円 = 52,500円
このように、年間で約5万円の税負担軽減となり、月額にすると約4,400円の家計負担軽減効果があります。
2025年12月1日以降の改正内容
所得要件の見直し
2025年12月1日以降、ひとり親控除の所得要件に一部変更が加えられます。具体的には、合計所得金額が500万円以下という要件について、給与所得控除の改正に伴い実質的な適用基準が調整されました。
改正前後の比較
改正前(2025年11月まで)
- 合計所得金額500万円以下(給与収入のみの場合、年収約678万円以下)
改正後(2025年12月以降)
- 合計所得金額500万円以下(給与収入のみの場合、年収約683万円以下)
この変更により、わずかですが適用範囲が拡大され、より多くのひとり親世帯が控除の恩恵を受けられるようになりました。
実務での影響
この改正により、年収680万円前後のひとり親世帯では、これまで所得要件により控除を受けられなかった方が新たに適用対象となる可能性があります。該当する方は、2025年の年末調整または2026年の確定申告で控除の適用を検討しましょう。
ひとり親控除の適用要件
基本的な要件
ひとり親控除を受けるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
生計を一にする子がいること
控除対象となる「子」とは、総所得金額等が48万円以下(給与収入のみの場合は年収103万円以下)の子をいいます。年齢制限はありませんが、一般的には以下のケースが該当します。
- 高校生以下の子(アルバイト収入が年103万円以下)
- 大学生でアルバイト収入が年103万円以下の子
- 成人後も障害等により継続的に扶養が必要な子
合計所得金額が500万円以下
納税者本人の合計所得金額が500万円以下である必要があります。給与収入のみの場合、2025年12月以降は年収約683万円以下が目安となります。
事実上婚姻関係にある者がいないこと
法律上の婚姻関係にないことはもちろん、事実上の婚姻関係(内縁関係等)にある者がいないことが要件となります。この判定は、住民票の続柄や生計の状況等を総合的に勘案して行われます。
婚姻歴による違い
ひとり親控除の大きな特徴は、婚姻歴の有無を問わないことです。
適用対象となるケース
- 未婚のひとり親:婚姻歴がなく、出産により子を扶養している場合
- 離婚によるひとり親:離婚により配偶者と別居し、子を扶養している場合
- 死別によるひとり親:配偶者と死別し、子を扶養している場合
すべてのケースで同じ控除額(35万円)が適用されるため、公平な制度となっています。
寡婦控除との違いと選択方法
寡婦控除の概要
寡婦控除は、ひとり親控除と並存する控除制度です。ただし、適用要件や控除額が異なるため、どちらを選択するかが重要になります。
寡婦控除の要件と控除額
- 一般の寡婦控除:控除額27万円
- 特別寡婦控除:控除額35万円(2020年分以降は廃止)
寡婦控除は女性のみが対象となり、以下の要件を満たす場合に適用されます。
- 夫と離婚した後婚姻していない者で、扶養親族を有する者
- 夫と死別した後婚姻していない者または夫の生死が明らかでない者
- 合計所得金額が500万円以下
どちらを選ぶべきか
同時に要件を満たす場合、納税者はひとり親控除と寡婦控除のうち、どちらか一方のみを選択できます。
選択の判断基準
ひとり親控除を選ぶべきケース
- 生計を一にする子がいる場合(控除額35万円)
- 男性のひとり親の場合(寡婦控除は女性のみ)
寡婦控除を選ぶべきケース
- 扶養親族(子以外)はいるが、生計を一にする子がいない場合
- ただし、この場合の控除額は27万円と少なくなります
実際のところ、生計を一にする子がいるひとり親世帯では、控除額が大きいひとり親控除を選択するのが一般的です。
年収別の節税効果シミュレーション
実際の税負担軽減効果を年収別に詳しく見ていきましょう。年収の壁計算ツールを使って、より正確な計算を行うことも可能です。
年収200万円のシングルマザーCさんの場合
給与収入200万円のCさん(子ども1人を扶養)の場合:
ひとり親控除適用前
- 給与所得:68万円(200万円 - 給与所得控除132万円)
- 課税所得:0円(基礎控除48万円、扶養控除38万円を適用後)
- 所得税:0円
- 住民税:約21,000円(均等割のみ)
ひとり親控除適用後
- 課税所得:0円(さらに35万円控除されるが、既に課税所得が0円のため変化なし)
- 所得税:0円
- 住民税:約21,000円
この年収レベルでは、既に他の控除により課税所得が0円となっているため、ひとり親控除による追加の節税効果は限定的です。
年収400万円のシングルファザーDさんの場合
給与収入400万円のDさん(子ども1人を扶養)の場合:
ひとり親控除適用前
- 給与所得:276万円(400万円 - 給与所得控除124万円)
- 課税所得:190万円(276万円 - 基礎控除48万円 - 扶養控除38万円)
- 所得税:約95,000円
- 住民税:約200,000円
ひとり親控除適用後
- 課税所得:155万円(190万円 - ひとり親控除35万円)
- 所得税:約77,500円(17,500円の軽減)
- 住民税:約165,000円(35,000円の軽減)
- 年間節税効果:52,500円
このように、年収400万円レベルでは年間約5万円の大きな節税効果が期待できます。
年収600万円のシングルマザーEさんの場合
給与収入600万円のEさん(子ども2人を扶養)の場合:
ひとり親控除適用前
- 給与所得:426万円(600万円 - 給与所得控除174万円)
- 課税所得:302万円(426万円 - 基礎控除48万円 - 扶養控除76万円)
- 所得税:約302,500円
- 住民税:約312,000円
ひとり親控除適用後
- 課税所得:267万円(302万円 - ひとり親控除35万円)
- 所得税:約285,000円(17,500円の軽減)
- 住民税:約277,000円(35,000円の軽減)
- 年間節税効果:52,500円
高収入世帯でも所得税率が同じ5%であるため、節税効果は年収400万円の場合と同様になります。
実際に計算してみましょう。年収の壁計算ツールでは、ひとり親控除を含む詳細な税額計算が可能です。
年末調整・確定申告での手続き方法
年末調整での手続き
会社員の方は、年末調整でひとり親控除の適用を受けるのが一般的です。
必要書類と記入方法
給与所得者の扶養控除等申告書に以下の記入を行います:
- 「ひとり親」欄にチェックマークを入れる
- 扶養親族等の詳細を正確に記入
- 本人の合計所得金額見積額を記入(500万円以下であることを確認)
注意すべきポイント
- 寡婦控除とひとり親控除は同時に適用できません
- 年度途中で婚姻した場合は、適用期間が制限されます
- 子の所得が48万円を超えた場合は控除の対象外となります
確定申告での手続き
自営業の方や年末調整で控除を受けていない方は、確定申告でひとり親控除を申告します。
確定申告書の記入方法
確定申告書の所得控除欄において:
- 「ひとり親控除」の欄に35万円を記入
- 扶養親族の情報を正確に記載
- 必要に応じて住民票等の添付書類を準備
よくある間違いと対策
年収の計算間違い 給与収入と給与所得を混同しないよう注意しましょう。所得要件の500万円は「合計所得金額」で判定されます。
事実婚の判定 住民票上では単身でも、実質的に事実婚関係にある場合は控除の対象外となります。
シングルマザー・シングルファザーが知っておくべき注意点
扶養親族要件との関係
ひとり親控除を受けるためには、生計を一にする子がいることが必要ですが、この「子」は必ずしも扶養控除の対象となる扶養親族である必要はありません。
年齢16歳未満の子がいる場合
扶養控除は年齢16歳以上の扶養親族が対象となるため、小学生や中学生の子がいるひとり親世帯では扶養控除を受けることができません。しかし、ひとり親控除は年齢制限がないため、16歳未満の子がいても控除を受けることができます。
高校生の子がアルバイトをしている場合
高校生の子がアルバイトをしており、年収が103万円を超えている場合は、扶養控除の対象外となります。同時に、その子が「生計を一にする子」の要件(総所得金額等48万円以下)も満たさなくなるため、ひとり親控除も受けることができなくなります。
年度途中での変化への対応
年度途中で離婚した場合
年度途中で離婚してひとり親となった場合、その年分からひとり親控除の適用を受けることができます。年末調整では、12月31日時点の状況で判定されるため、早めに勤務先に申告することが重要です。
年度途中で再婚した場合
年度途中で再婚した場合、その年の12月31日時点では「ひとり親」の要件を満たさなくなるため、ひとり親控除は適用されません。ただし、再婚により配偶者控除や配偶者特別控除の適用を受けられる可能性があります。
子の就職や独立による影響
子が就職して扶養から外れる場合
子が就職して経済的に独立し、「生計を一にする子」でなくなった場合、ひとり親控除の適用要件を満たさなくなります。この場合、女性であれば一般の寡婦控除(控除額27万円)を検討することになります。
大学生の子のアルバイト収入管理
大学生の子がアルバイトをしている場合、年収103万円以下に調整することで、ひとり親控除を継続して受けることができます。年末が近づいたら、子のアルバイト収入を確認し、必要に応じて収入調整を検討しましょう。
他の制度との併用について
扶養控除との併用
ひとり親控除は扶養控除と併用することができます。
子が複数いる場合の最適化
例えば、高校生と大学生の子がいるひとり親世帯では:
- 高校生の子:扶養控除38万円
- 大学生の子(19歳):特定扶養控除63万円
- ひとり親控除:35万円
これらを併用することで、合計136万円の所得控除を受けることができます。
医療費控除等その他の控除
ひとり親控除は所得控除の一つであり、医療費控除、生命保険料控除、地震保険料控除等の他の所得控除と併用することができます。
特に、ひとり親世帯では子の医療費負担が大きくなりがちです。年間の医療費が10万円を超える場合は、医療費控除の適用も併せて検討しましょう。
まとめ
ひとり親控除は、シングルマザー・シングルファザーにとって重要な税制支援制度です。控除額35万円により、年収400万円程度の世帯では年間約5万円の税負担軽減効果が期待できます。
2025年12月1日以降の改正により、所得要件がわずかに緩和され、より多くのひとり親世帯が制度の恩恵を受けられるようになりました。年収680万円前後の世帯では、新たに適用対象となる可能性があるため、確認が必要です。
手続きは年末調整または確定申告で行い、寡婦控除との選択制となっているため、控除額の大きいひとり親控除を選択するのが一般的です。扶養親族要件や年度途中での変化には注意が必要ですが、適切に活用することで家計の負担軽減につながります。
子育てと仕事で忙しい日々の中でも、このような制度を活用して少しでも家計の負担を軽減し、安心して子育てに専念できる環境を整えていただければと思います。