令和8年分源泉徴収税額表が改正!企業の給与計算への影響と対策
このような質問をよく見かけます。「来年の源泉徴収税額表は変わるの?」「基礎控除の改正で給与計算はどう変わる?」多くの企業の給与担当者が、令和8年分の源泉徴収に関してこのような疑問をお持ちかと思います。
令和7年度税制改正により、令和8年分以後の源泉徴収税額表が改正されることが決定しました。基礎控除の見直しや給与所得控除の改正が主な要因ですが、この改正は企業の給与計算業務に大きな影響を与えます。
この記事では、改正される源泉徴収税額表の具体的な変更点と、企業が準備すべき対応策について詳しく解説します。給与担当者の方はもちろん、税務に関心のある方にも分かりやすくお伝えします。
源泉徴収税額表改正の背景と概要
令和7年度税制改正による影響
令和7年度税制改正では、以下の2つの大きな見直しが行われました:
1. 基礎控除の見直し
従来の基礎控除48万円から、所得に応じた段階的な引き上げが実施されます。最大で95万円(58万円+特例加算額37万円)まで拡大される場合があります。
2. 給与所得控除の見直し
中所得層を中心とした給与所得控除の引き上げにより、給与所得者の税負担が軽減されます。
これらの改正に伴い、令和8年分以後の源泉徴収税額表が全面的に見直されることになりました。
改正される税額表の適用時期
適用開始: 令和8年1月支払分から 公表予定: 令和7年8月末頃に国税庁ホームページで公開
企業の給与計算システムや計算表の更新は、令和7年12月までに完了させる必要があります。
特例加算額が税額表に織り込まれない理由と影響
特例加算額とは
基礎控除額58万円に加算される以下の金額を指します:
- 第1段階: 37万円の加算
- 第2段階: 30万円の加算
- 第3段階: 10万円の加算
- 第4段階: 5万円の加算
なぜ税額表に織り込まれないのか
国税庁によると、これらの特例加算額は以下の理由で源泉徴収税額表には反映されません:
1. 個人差への対応
特例加算額の適用は納税者の所得水準によって異なるため、一律の税額表では対応困難
2. 制度の柔軟性確保
年末調整や確定申告の段階で、より正確な所得把握に基づいた適用が可能
3. 実務上の複雑性回避
毎月の源泉徴収では概算徴収とし、年末で精算する従来の枠組みを維持
企業への実務的影響
月次給与計算
- 現在の源泉徴収方法を基本的に維持
- 新しい税額表に基づく概算徴収を実施
年末調整での対応
- 特例加算額の適用判定が必要
- より複雑な計算プロセスに対応
年末調整・確定申告での特例適用
年末調整での対応手順
1. 所得金額の確定
給与所得控除後の所得金額を正確に計算
2. 特例加算額の判定
納税者の所得水準に応じて適用される加算額を決定
3. 基礎控除額の確定
58万円+適用される特例加算額で最終的な基礎控除額を算出
4. 年税額の再計算
確定した基礎控除額で年間所得税額を計算
5. 源泉徴収税額との精算
月次で徴収した税額との差額を還付または追徴
確定申告が必要なケース
以下の場合は確定申告での調整が必要です:
- 年末調整を受けていない給与所得者
- 複数の勤務先からの給与がある場合
- 給与以外の所得がある場合
- 医療費控除等の追加控除がある場合
企業担当者が準備すべき対応策
システム・計算表の更新
1. 給与計算システムの改修
- 令和8年分源泉徴収税額表への対応
- 年末調整機能の拡張
- 特例加算額判定機能の追加
2. 手計算用資料の準備
- 新しい源泉徴収税額表の印刷・配布
- 年末調整計算シートの更新
- 特例適用判定フローチャートの作成
社員への周知・説明
1. 制度変更の周知
社員向けに基礎控除改正の内容を分かりやすく説明
2. 手取り額への影響説明
月次給与と年末調整での差額発生可能性を事前に伝達
3. 必要書類の準備依頼
年末調整で追加で必要となる可能性のある書類を事前に案内
税理士・社労士との連携強化
1. 制度理解の深化
専門家からの詳細な制度説明を受ける機会を設定
2. 実務対応の確認
具体的な計算方法や判定基準について事前確認
3. トラブル対応の準備
想定される問題と対応策を事前に整理
具体的な影響額のシミュレーション
年収別の影響例
年収300万円の給与所得者(独身)の場合
令和7年分(現行):
- 給与所得控除:102万円
- 基礎控除:48万円
- 課税所得:150万円
- 所得税(年額):約7.5万円
令和8年分(改正後・特例第1段階適用時):
- 給与所得控除:102万円(変更なし)
- 基礎控除:95万円(58万円+37万円)
- 課税所得:103万円
- 所得税(年額):約5.2万円
減税効果:約2.3万円
このように、特例加算額の適用により大幅な税負担軽減が期待できます。
月次源泉徴収と年末調整の差額
上記の例では、月次の源泉徴収は従来の税額表で行われるため、年末調整時に約2.3万円の還付が発生する可能性があります。
よくある質問と回答
Q: 従業員から「なぜ月の給与で減税されないのか」と質問された場合は?
A: 特例加算額は年末調整で適用されるため、月次の源泉徴収では従来通りの概算徴収が続きます。年末調整時に正確な計算を行い、差額を還付する仕組みであることを説明してください。
Q: 年末調整の事務負担はどの程度増加しますか?
A: 特例加算額の適用判定が新たに必要となるため、従来より計算工程が増加します。ただし、多くの給与計算ソフトが対応予定のため、システム化により負担軽減が期待できます。
Q: 中途入社・退職者の処理はどうなりますか?
A: 年末調整の基本的な考え方は変わりませんが、特例加算額の適用判定は年間所得に基づくため、より慎重な計算が必要です。
まとめ
令和8年分源泉徴収税額表の改正は、基礎控除の見直しに伴う重要な変更です。企業の給与担当者は以下の点を重点的に準備する必要があります:
- 8月末の税額表公表後、速やかなシステム・資料の更新
- 年末調整での特例加算額適用への対応準備
- 従業員への制度変更の適切な周知
- 専門家との連携による実務対応の確実性向上
この改正により多くの給与所得者の税負担が軽減される一方で、企業の事務負担は一時的に増加する可能性があります。しかし、適切な準備と対応により、スムーズな移行が可能です。
年収の壁計算ツールでは、改正後の税額計算にも対応予定です。実際の影響額を知りたい方は、ぜひシミュレーションをお試しください。